「あいわかった!」
……え? わかったの?
「わかったが、納得したわけではないぞ」
いたずらっこみたいな顔で親父が続ける。いくつなんだよこのひと。それを見て、母はそっと父に寄り添う。
(あなたのそういうところが大好きなの! ってオーラ出しまくりだよー。見てる方が恥ずかしい)。
はい、と俺は答える。
「そのような産物をどうやってつくるのだ? 人々が求めるものや、利の多いものでないと意味がないぞ」
「もちろんでございます! それについてはいくつか腹案がございまして……」
「ああ、いいいい。絵に描いた餅なら意味がない。その中にお主でも簡単につくれて、利がでるものはあるのか?」
(え、いやあ、そう言われるとかなり限定されるからなあ……)
「ひと月やる。ひと月でその算段なり商品なり、わしが納得できるものをもってこい。それからだ」
(ひと月! それってどうなん?)
「は、かしこまりました! それともう1つ」
「なんだまだあるのか?」
(本当はもう2つ3つあるけど……)
「はい、これまでは南蛮との商いに要る宣教師を呼ぶための、領内向けの策でした。が、今要るもの、それは武威にございます」
「? 武威?」
親父が怪訝な顔をした。
「はい、南蛮の商人や宣教師が領主に求めるもの、それは静謐です。仏教の門徒や僧侶、その他の者からの妨げがないということですが、これはさきほどお話しした通りです」
俺は続けた。
「ただ、それだけでは足りません。南蛮との商いの利は莫大なもので、どの大名も喉から手が出るほど欲しがっています」
親父は小さくうなずいた。
「もし自らの所領の隣にそのような場所があり、仮にそれを奪う武威をもっていたら? そして奪い取れなくても、介入や妨げ、焼き討ちなどができるのなら?」
さらに続ける。
「戦の世において、隣国の賑わいは自国の滞り、死につながるのです。他国からの口入れ(介入)の恐れも常にございます」
そして残念ながら小佐々氏単独では松浦氏には対抗できない。
だから大村純忠を総代にして、あたかも我々がいち家臣であるかのように、対外的には振る舞う。
実利を得る、ということだ。
「それに……。大村様にも、我らと手を組まなければならない理由があります」
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