第13話 平戸の南蛮船誘致と宗教改革の提案

 疑いと興味と期待とがまざった表情で俺を見ている親父に対して、俺は淡々と答える。
 
「可能です。ただし父上はもちろん、小佐々の殿様のお力も必要です」

「詳しく話してみろ」

「はい、現在南蛮船は九州のいろいろなところに来航し、各大名領主も率先して貿易船の定期的な誘致に取り組んでいます」

 うん、うん、と親父はうなずく。

「おもだったところでは、豊後の府内に薩摩、それから平戸です」

 平戸と豊後の府内においては、他国を一歩リードしており、薩摩が貿易船の定期来航を狙っている。

「そしてこの南蛮船の誘致には、必ず対になっているものがございます」
 
 なんだ? という親父の問いに対して俺は答える。
 
「キリシタンの布教です」
 
 それなんだよな~。口には出さないが、そういう顔をする親父がいた。

「ご存知でしたか?」

 俺が尋ねると、親父が答える。
 
「海賊稼業で商船護衛なんてやってると、勝手に商人から諸国の情報が入ってくるもんさ。それに俺たちゃ仏教徒だから、異教の布教なんぞ認めたら、坊主どもがうるさい」

 うんうん、そーなりますよね。

「なぜ、うるさいのですか?」
 
 わざと確認するように、ゆっくりと聞いた。
 
「そりゃあ門徒だよ」
 
 何いってんだお前、みたいな感じで見られる。

「門徒が改宗して減っちまえば、当然寄進する家も減るし、それどころかお布施も減って、立ち行かなくなるだろ?」

「では寄進が減っても銭の入りが減らなければ?」
 
 俺はドヤ顔で親父をみる。
 
「そんな事が能うのか?」
 
 親父は目を見開いた。

「能います。そもそも門徒が豊かであれば寄進も増え、その逆もしかりにございます。門徒を豊かにし、もしくは住む場を設けて各地の職人や逃れた民を集めて特産品をつくれば、仮に門徒が減ったとしても、それがすなわち寄進増となります」

 俺は続けて説明する。

「感情的に門徒が減るのはいい気分ではないかもしれませんが、そもそも門徒が移るということは、そこに朝夕事(暮らし)への不満や新しい教えへの期待があるからです。ここはもう、寺自らが考えなければならぬところでしょう」

 うーん、と親父がうなる。

「さらに一番顕著なのは豊後府内ですが、彼らは領内に学校や病院、孤児院などをたてて貧しき民を助けています」

 要するに同じものを与えれば良いのだ。

「同じ事を寺社でもやればいい。もちろん領主はどちらにもえこひいきしない」

 母は目がキラキラしている。(立派になって……)

 政教分離に政教分離! この時代にはない概念かな。あ、信長とかが近いのかな?

「いかがでしょう?」

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