第176話 3月 第二回練習艦隊 広南国の会安

 永禄十一年 三月 籠手田安経

 広南国(ベトナム)の会安(ホイアン)についた。

 この国の王である阮潢(グエン・ホアン)は、もともと仕えていた王朝が新王朝に奪われ、それに対抗して南部に出来た勢力の王だ。
 
 現在はその新王朝を倒すために共に戦っているもう一つの勢力、鄭松を支援しつつ南部に勢力を拡大している。

 しかしこの地域は北部勢力と違って、明や日ノ本との交流も盛んである。
 
 南蛮人、いや南蛮人がたくさんの種類いるので、もう殿が言っているポルトガル人に統一しようと思う。

 今いるこの会安も、広南国の首都である富春(フエ)の外港である。日の本の民もいれば明の人間もいる。

 ここ会安から富春までは陸路で三十里ほどだ。今回の訪問も他国同様国交の樹立と交易の開始だ。これはあまり難しくはないだろう。

 言葉の問題があるが、現地の日の本の民や明の人間、何ならポルトガル人を介してもいい。

 現地語の分かる人であれば問題ない。ただし、意思の疎通における間違いだけは防がなければ。

 石炭や鉄の元になる石、それから銅がとれれば取引したいが、銅はわが国でもとれる。価格や量によるだろう。

 鮫皮・象牙・胡椒・水牛の角・鉛や薬などがあってもいい。

 石炭は今のところ必要ない。鉄の石は、殿は日ノ本の石とは違うといっていた。

 何が違うのかよくわからんが、採れるものなら輸入したい。

 輸出はどうだろう? 日ノ本と同じく近隣と戦っているなら武器も必要だろうが、あまり武器は輸出したくはないのが本音だ。

 国力に直結するから、南蛮の国とはいえ乗り気はしない。
 
 日の本古来の工芸品が無難なところだろうか。領内で出回っている石けんや澄酒、鉛筆や椎茸などもいいかもしれない。

 なにしろ、どのようなものが必要なのかは実際に話してみないとわからないのだ。

 南蛮の諸国は明やポルトガルと違って銀は必要ないだろうか? 必要ないのであれば、金や銀を支払いに使う交易路は限定しておきたい。

 国内の兌換貨幣や紙幣の導入に、兌換元の金や銀は手元に残しておきたい。

 ああ、それから『ごむ』の木だ。

 殿いわく、木の皮をはがして白い汁がでたら、それが『ごむ』の木らしい。『ごむ』はこれから行くカンボジアやシャムでも交渉するが、車輪の材料になる。

『こんくりいと』の利用で街道が舗装されていくと移動が楽になるが、その際の移動に使われるのが馬車だ。

 その車輪は木で作っているのだが、乗り心地が最悪だと殿はぼやいていたな。

 他にも『ゴム』の使い道はたくさんあるらしい。

 しかしカンボジアはもとより政情不安な国もある。外国の圧力で通商関係に影響がでるかもしれない。よって複数の交易国を持っておくことが肝要だろう。

 自由気ままに船にのって旅ができたら楽だが、今わしは小佐々の代表としてきておる。しっかりしなければ、と気を引き締めながら富春に向かうのであった。

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