第48話 永禄五年 大友義鎮、動く

永禄五年 大友義鎮、動く 二島五ヶ村の領主 無双≠生き延び スタート
永禄五年 大友義鎮、動く

 同年 四月 沢森城 沢森政忠

「大友義鎮は少弐家を再興すべく、少弐政興を擁立いたしました」

 やっぱりかあ! 

 千方の報告に、文字通りの感情が湧き上がった。これからいよいよきな臭くなるぞ。一歩間違えば家が潰れる。

 最悪、相神浦や大村が潰れても、我らは生き延びなければ。

「筑紫氏や横岳氏等の周辺国人にも呼びかけ、少弐政興は綾部城(少弐山城)を本拠にした由にございます」

 龍造寺隆信に暗にこう伝えているのであろう。
 
「……俺は、お前が滅ぼした少弐氏を再興させ、後押しするよ。意味、わかるよな?」と。

 しかし、今のところ軍事行動はないらしい。……そのまま、そのまま、絶妙の軍事バランスでいてくれよ。

 大友が動いて、それに呼応して動かれても困る。有馬様、大村様、頼むから軽はずみに動かないでくださいね。

 我らは海軍主体で、陸戦は弱いと思われがちなので加勢はせずとも、出撃の間隙を突いて平戸が「敵に援軍なし!」で攻めてくる可能性があるから。

 龍造寺の相手を大村有馬がやっている間に、平戸と後藤の連合軍とかまじ勘弁だから。うん、その辺は小佐々様を通じてやんわりと伝えてもらおう。

 絶対に動くなよ~。絶対、絶対、動くなよ! (? ん? このフレーズは……)

 ■同刻 武雄城下 後藤惟明

「なに? 大友様が?」

 驚いた。義父上が大友に盟約の使者を送る事もそうだったが、今回の少弐擁立の件、まるであの忍びの言った通りではないか。

 沢森政忠、いったいどこまで見通しているのか? いや、それよりも問題は今後だ。方針を決めておかねばまずい。

 まず第一に、誰も動かない場合、これは簡単だ。

 あえて動く必要はない。龍造寺の脅威があるとは言え、昨年波佐見に追いやられた神代勝利が三瀬に返り咲いたという。

 やつに龍造寺の相手をさせ、こちらはじっくりと力を蓄えればいい。

 第二に、動いた場合、間違いなく有馬と大村は呼応して杵島郡に攻め入るであろう。その時にどうするか? 

 我らも呼応して攻め込むか? 否。連合軍が勝てば、なるほど龍造寺の勢力は駆逐される。

 しかし反対に、神代勝利は領土的野心がないとしても、有馬大村の勢力は嫌でも大きくなる。敵を太らせてどうするのだ?

 さらに同時に父上から助力の要請がきたらどうする? 

 ここは呼応せず、父上から要請がきたら、相神浦、もしくは大村の親勢力である彼杵郡方面に攻め入るのが上策。

 第三に、もし連合軍が負けたら、龍造寺の勢力いや増すばかり。弱体化した有馬の援軍がない相神浦を父上が攻めるのは必定。

 しかしその時、我らまで痛手を負っていれば、龍造寺に備えつつ、父上の助勢になどむかえぬ。

 ! 至急義父上に、間違わぬようお話せねば!

 ■後藤貴明 居室

「それで、その方は、大友様ではなく、その方の父上の平戸松浦に味方しろと?」

 しまった! 逆上させたか?

「ふん。考えておこう。しかし、夢々忘れるな。その方は、こちらが乞うて迎えたのではないぞ。平戸から相神浦松浦を牽制するために、乞われて迎えたのだ、という事をな」

 そんな事はわかっている。わかっているが、義父上は子供が生まれてから変わられた。もともと冷徹な人だったが……。

 もし、大友方に味方するようであれば、少し考えねばならぬかもしれない。

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