第53話 くそ親父バカ親父アホ親父!

 永禄五年 七月 沢森城

 膨大な出費に目がくらみながら、道喜と弥市を前にして、頭をひねる。ガレオン船一隻つくるのに相当金かかるな。増収増益しないといけない。

 問題は、どこから捻出するかだ。

「道喜よ。今のしゃぼんの販売量は今後も維持できるか?」

「はい。大変人気にて、おおよそ各都市とも横ばいで推移しております」

「なるほど。では昨年末より試しに作っておった、菜種、鯨油、イワシの油をつかった品質別のしゃぼんはどうじゃ? 売れるか?」

「はい、売れるのは売れまする」

 道喜の言葉にほっとする。

「菜種に関しては米の裏作にてできた物が大量にありますので、仕入れ値は要りませぬ。薪・木炭のみにて、同じ値で仕入れができまする」

「なるほど」

「それゆえ、いくらで売ってどれほど売れるか? にもよりますが、椿油は高値にて、各都市の人口の百分の一程度の販売量にございます。京、大阪、駿府、一乗谷、春日山、博多、鹿児島が多うございますので、そこを主として売っております」

「さすがだな。おぬしと知りおうて幸いであった」。

 政忠の本心である。

「五十文ほどで売って、倍ほど売りさばけば、約五百六十貫の儲けになり申す」

 しかし、やはり利益が少なすぎる。

「倍売っても利が少ないな。ではやはり……」

「はい、鯨油や鰯油で作ったとて、同じ価格では売れませぬ。されば倍、三倍売らねばなりませんが、さほど儲かりません。それに何倍にも増やすとなれば、それこそ薪代に炭代が跳ね上がります」

「ではひとまず菜種で作り、市場調査も兼ねて売価を決めていく他ないのう」

「はい、それが良いと存じます」

「弥市、塩はどうだ」

「はい、石炭は煮出し用に十分ありますので、燃料が足りぬ事はありません。また、殿がお話された、煉炭? まめ炭ですか。石灰石と粘土の混ぜ具合を調整して、囲炉裏や火鉢用に使えまする」

「うむ」

「単純に生産高が三倍になるので利も三倍となります。一升平均三十文で販売して千五百貫の儲けになります。が、しかし、供しすぎると値が下がります。あくまで平均とお考えください」。

「なるほど」

「増産して、月に三千貫文。くじらを三倍にして、合計で八千五百貫程度にはなるかと」

(うーん、足りないな。もっと増やさないと)。

「殿、あまりご機嫌がよろしくない様でござりまするな」

「え、あ、いや、そんな事はないぞ」
 
 俺はそう言って右を見る。

 女の子がちょこんと座って俺を見ている。

 ……。
 
 そう。そうなのだ。勘のいい人はもうおわかりだろう。

 俺は祝言をあげた。いや、あげさせられた。させられたのだ!

「私がいると殿はご迷惑ですか?」

「いや、迷惑じゃないよ」
 
 迷惑とか言えんやん。そりゃあ、わかっとるよ。当主として、いつかは……って覚悟はしとったよ? でも早すぎん? 

 まじで。そんな場合じゃないやろ? 

 南蛮貿易やり出したばっかりやし、領内の産業も見直して増益せんといかんし。周りは予断をゆるさん状況で武器弾薬も蓄えないかんし……それどこじゃなかやろ?

 ■同刻 小佐々城 沢森政種

「ぐしゅん!」

「どうかされましたか?」
 
 わしは小佐々の殿に聞いた。

「いや、なんともない。平九郎は今どうしているかと思うての。まこと良い時期に祝言があげられたものだ」。

「そうですね。最初は絶対に嫌だ、とつっぱねておりましたが、本当はわかっておったのですよ。いつかはせねばならぬ事を。それが、ごほん、ぐすん、ぐっじゅぐぐ。……今になっただけの事。めでたい事でございます」。

「本当に大丈夫か? 夏風邪ではないのか? 体は大事にせよ。そなたはまだ若いのだから。ぐしゅん!」

 大丈夫ですか?

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