第10話 674石のしょぼ領主

 親父と話をしに行く前に、いろいろと整理しておこう。
 
 状況を分析し、最善の提案をして領内を豊かにしなくてはならないからだ。舐められないためには武力が必要。
 
 しかしそのためには、鉄砲や弾薬、大砲はもちろん、人員も必要だ。戦のための食糧問題だってある。水軍だから船も必要だ。

 それには金がかかる。人、モノ、金。

 産業を振興して人を集め、金を落とさせる。交易によって儲ける。武力はもちろんだが、経済によって敵を弱体化させる。

 経済力に裏打ちされた武力。武力によって外交を優位にすすめ、経済戦争に勝つ。

 なんで横瀬(大村純忠)がポルトガル人に選ばれ、貿易港として繁栄したのか?

 もちろん、大型船が停泊できて、波がたたない穏やかな入江であることは前提条件。しかしそれだけなら他にもたくさんある。なぜか?

 宮の前事件でポルトガル人が殺害されても、松浦隆信は日本人を処罰しなかった。

 と、いうことは今後も同じことが起きる可能性があるということ。身の危険を感じながら安全な貿易なんてできるはずがない。

 だから安心して布教活動・貿易ができること。これが2つ目の絶対条件になってくる。

 仮に松浦氏からの政治的・軍事的介入があったとしても、対抗できる力を持っていること。そして白羽の矢が立ったのが、大村純忠だったんだ。

 何年も前からバチバチやってるもんな。

 ……ん、これ詰んでない?

 軍事力で大村純忠に対抗できるわけないやん! むこうは戦国大名・・、こっちは寄り親の小佐々氏含めて戦国領主・・! 規模が違う。

 来年誘致するから、横瀬じゃなくても、それこそ福田や長崎が先に開港するだけの話だ。

 石高を比較しても、小佐々氏・沢森氏を抜いた彼杵郡そのぎぐんの石高は戦国期で2万5~6千。

 合計2,726石(小佐々2,051石、沢森674石)程度の俺たちじゃ、太刀打ちできるはずがない。10倍近い差がある。

 松浦氏なんて絶対無理無理! 水軍はかろうじて海域を接しているとはいえ、寺島水道から角力灘すもうなだ、五島灘西岸まで支配下にいれている。

 単独で戦になったら、単発で勝てたとしても、ジリ貧になるのは目に見えている。

 江戸時代に入ってからは大村藩が約5万石、平戸藩が8万石と松浦氏がリードしている。

 しかし当時は、お互いに領内がまとまっていなかったり、周辺に諸勢力が乱立していたりで、拮抗していたのだろう。

 その証拠になんども佐世保一帯(中間地帯)で領地をめぐる紛争を起こしている。

 うーん、どうするどうする……どうする政忠! (あれ?)

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