第157話 宗義調へ「対州鉱山の開発を支援しよう」

宗義調へ「対州鉱山の開発を支援しよう」 北九州を二分する 二つの二虎競食の計
宗義調へ「対州鉱山の開発を支援しよう」

 同年 十一月 金山城 宗義調

 使者の沢森利三郎と農商務省・工部省の官僚が言った。

「大串から技術者を派遣します。手押しポンプなどを使って排水を効率化して、鉱山運営を再開しましょう」

 沢森家からは石けんの製造の方法を教えてもらうかわりに、朝鮮との通商の橋渡しになってくれと頼まれていた。それは問題ない。

 陶工技術者を招聘するにあたっては、表向きはどうかわからないが、賄賂を渡せばなんとでもなる。

 要するにわが国ともっと通商関係を密にして、商いの幅を広げたいのだろう。それであれば問題はない。古来対馬では金銀鉱山があって租税もそれに充てていた。

 しかしいつの頃からか、さびれてしまい閉鎖されている。

 それを復活させようとは。様々な技術開発が小佐々領ではなされていると聞く。これはうまい話かもしれぬな。

「なるほど。ではそれによって得られる利はわかった。その方ら小佐々にはどんな利があるのだ?」

「利があると申しましょうか、それはこれからの話しになりまする。商いをする際に、支払いを銀で行ってほしいのです。また、銅を売る際には、わが家中に重きをおいて欲しゅうございます」

「ふむ。ではその方らは銀と銅が欲しい、と」

「はい。もちろんその他の産物もお互いの国にて商いをする場合には税を軽くするなど検討いたします。いかがでしょうか?」
 
 利三郎は言う。

(なるほど。銅は商いの重要な品目になるし、銀もその他の支払いに使えるので悪い事はないか。しかし、金石の類となるといずれ枯れる恐れがあるな。一年二年での話ではないが、なにかこう、決め手が欲しいの)

「そうだの。あ、そうそう。せんだってのなんと言うたかの。若い、ああそう、喜どのか。よろしく伝えておいてくれ」。

 はい、と利三郎が苦笑いをしている。

「それはそうとして、もう少し決め手が欲しいな。ご存知のように対馬は米も取れぬし山が多いので、そばや麦を植えて食料に替えておる。年貢としては海の幸とあわせても厳しいのじゃ」

(担保としてなにか別のものを用意させよう)

「新しい産物・作物や、他には、例えば石けんじゃ。どうにもいただいた石けんと同じ様な物が作れぬ。そのあたりも含めて助けていただく事は出来ぬだろうか?」

(さて、知恵者利三郎はどう返してくるかな?)

「……。なるほど。それでは食糧事情においては、明から渡来した唐芋の種をお譲りしましょう。もちろん、栽培の職人もお貸しいたします。年貢にはなりませぬが、食糧事情の改善にはつながるかと」

 それから、と利三郎は続けた。

「せっけんに関しては即断できませぬが、主と相談して良い方向で検討したいと思います。それから対馬で採れます魚や貝類などは、小佐々が大量に買い取りましょう。量と値についてはこれから相談いたしますが、ご満足いただけるかと」

(さすがに喜殿のようにはいかぬか。しかしそれでもかなりの良い条件じゃ)

「あいわかった。それではよろしくお頼み申す。あわせて、朝鮮人の陶工の件じゃが、まもなくである、とお伝えくだされ」

「ありがたき幸せにございます。それではこれにて失礼いたします」

 今回の交渉はやはりこちらに有利かと思ったが、それほど銀と銅が必要なのであろう。

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