姜維信繁

転生した無名藩士、幕末の動乱を生き抜く

第29話 『幕府最後の巡見使。ゲベール銃の完成とパーカッションロック式』

天保九年四月十四日(1838/5/7) 玖島くしま城「巡見使の検分はつつがなく終わったか?」 巡見使とは、江戸幕府が諸国の監視と情勢調査のために派遣した使節の事だが、天領および旗本知行所を監察する御料巡見使と、諸藩の大名を監察する諸国巡見使...
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第28話 『坂本龍馬の支援者・小曽根乾堂の父、小曽根六左衛門』(1838/2/9)

天保九年一月十五日(1838/2/9) 長崎「お慶よ、石けんじゃが、お前に聞くのもどうかと思うが、このまま商いを続けても大丈夫なのか?」父の太平次はお慶の事を、九歳にして商いにおける神童と感じてはいたが、やはり長年営んできた油問屋に未練があ...
内政拡充技術革新と新たなる大戦への備え

第589話 終戦決定と責任。そして大国の拒否権発動。

天正二年 一月十七日(1573/02/19) 近江国蒲生郡  日ノ本大同盟合議所『日ノ本大同盟』の憲章、そして細部規約の制定と同意のための会談も大詰めである。 ・終戦の可否とその時期の決定基準 ・大同盟軍内での各国(甲)の作戦行動による各国...
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第588話 報復行動の可否と恩賞の基準

天正二年 一月十六日(1573/02/18) 近江国蒲生郡  日ノ本大同盟合議所「では敵から討ち入られた時は如何いかが致すのでしょうか」 徳川家の青山忠成が発言し、石川数正もそれを後押しする。 これは何も軍事行動だけとは限らない。 隣接国か...
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第27話 『高島秋帆の一番弟子、平山醇左衛門との出会い』(1838/1/10)

天保八年十二月十五日(1838/1/10)玖島くしま城「佐賀武雄鍋島家が郎党、平山醇左衛門じょうざえもんと申します。このたびは謁見の栄誉を賜り恐悦至極に存じます」 長身である。 とは言ってもこの時代で考えればというくらいで、165cmでお里...
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第26話 『佐賀藩、大村藩に遣いを送り、探りを入れる』(1837/11/12)

天保八年十月十五日(1837/11/12) 佐賀城 次郎左衛門が藩主大村純顕あきにゲベール銃の複製を申請し、硝石と火薬の藩内での大規模な製造を進言している頃、肥前一の大藩である佐賀藩、佐賀城で会見が行われていた。 会見、といっても仰仰しいも...
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第587話 織田信長と武田勝頼の密談会盟。軍事行動合議制の可否

天正二年 一月十四日(1573/02/16) 夜 近江国蒲生郡 武佐宿村 織田宿舎「殿、いかがなさるおつもりですか?」「左様、このままでは織田は完全に小佐々の下風に立ち、顔色をうかがわねばならなくなりますぞ」 光秀の言葉に秀吉が同調する。珍...
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第586話 何が軍事行動か?その定義

天正二年 一月十四日(1573/02/16) 近江国蒲生郡 武佐宿村 小佐々織田合議所 年が明けて天正二年、純正は朝廷への新年の挨拶と義父への挨拶を終え、合議所にいた。藤子と娘の篤は二条晴良宅に預けている。 小佐々織田合議所という仮称だった...
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第25話 『ゲベール銃』(1837/10/01)

天保八年九月二日(1837/10/01) 長崎 次郎左衛門『ゲベール銃』 1670年代にフランスで開発されて1777年にオランダが正式採用した小銃で、一般的に言われる火縄銃と同じように火薬と弾を銃口から込めるが、点火方式が火縄ではない。 フ...
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第24話 『白帆注進心得』(1837/9/14)

天保八年八月十五日(1837/9/14) 玖島くしま城 <次郎左衛門>「は、白帆注進の際における心得にございます」 俺は居住まいを正し、殿に進言をした。「いかなる物か?」「はい」 俺はそう言って箇条書きにした提案一覧を読みながら紹介した。内...
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第585話 合議制による銭の力で日ノ本一統。(1572/12/05)

天正元年 十一月一日(1572/12/05) 諫早城 「すなわち知行ではなく、銭にて報いると?」「その通り」「然されど、銭の配分なり、いずれの大名に如何いかに銭をまわすかなど、後々差し障りがございませぬか?」「無用じゃ」 純正には腹案がある...
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第23話 『モリソン号警告についての幕府の見解と、聞役としての動き』(1837/9/14)

天保八年八月十五日(1837/9/14) 玖島くしま城 <次郎左衛門>「次郎左衛門よ、もう傷の具合は良いのか」「はは、おかげ様をもちまして、完治いたしましてございます」 俺は右肩をグルグル回してみせる。殿はニコニコ笑っているが、鷲之わしの助...
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第584話 純正の大義名分と信長の大義名分(1572/12/05)

天正元年 十一月一日(1572/12/05) 諫早城 「さてみんな、集まってもらったのは他でもない。例の如く小佐々家の今後の基本方針と、織田・武田・徳川・浅井・畠山・里見に対する外交姿勢について論じたいからである」 集まった閣僚の表情は十人...
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第22話 『石けん販売の今後と領内でしばしの休養』(1837/8/2)

天保八年七月二日(1837/8/2) 太田和村 <次郎左衛門> 腕は、ほぼ完治した。 包帯も外して風呂にもそのまま入れる。触ると少し痛いが、腕をグルグル回しても違和感はない。 一之進からは煎じ薬だけは絶対に忘れるなと口をすっぱくして言われて...
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第583話 シリコン含有率の高い鉄と垂直型ドリルによる大砲の規格化

天正元年(1572)十月五日 諫早城  下越においては、謙信にとって僥倖ぎょうこうとも言える状況であった。 本庄城、鳥坂城、新発田城の奪還後に膠着こうちゃく状態になり、伊達・蘆名両軍も防衛陣地を下げて抵抗していたのだが、伊達領の北にある最上...
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第21話 『黒幕と顛末』(1837/7/6)

天保八年 六月四日(1837/7/6) 雪浦村 冨永屋敷 <次郎左衛門>「あ痛……」 痛みと共に目が覚めた。「おお! 目が覚めたぞ!」 一之進が俺の顔を見て安堵の声を上げる。それを聞いて、交代で仮眠をとっていた信之介にお里が駆け寄ってきた。...
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第582話 房総の雄 里見佐馬頭義弘

天正元年(1572)九月二十八日 上総 久留里城「殿! 安房勝山城より急使にございます!」「なんじゃ、騒々しい。通せ」 上総久留里城主であり、安房と上総を治める里見佐馬頭さまのかみ義弘のもとに、安房国平郡勝山城より急ぎの知らせが入ったのだ。...
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第20話 『偽物と刺客』(1837/7/5)

天保八年 六月三日(1837/7/5) 肥前国は現在の佐賀県と、壱岐と対馬を除く長崎県にあたる、律令制下の西海道に属していた国である。 その中でも西側に位置する大村藩は彼杵そのき地方(彼杵郡)にあり、南北に延びた西彼杵にしそのぎ半島(西海市...
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第581話 織田信長&徳川家康&浅井長政の野望

天正元年(1572)九月十一日 岐阜城「さて、小佐々が謙信と軍いくさをしておる間、荷留と津留のみであるが、われらも助力いたした。その間、伊賀と紀伊において進展はあったか?」「は、伊賀においては最低限の権益を与えることで服属をさせました。紀伊...
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第19話 『大村藩保守派の妬み』

天保八年 五月十五日(1837/6/17) |玖島《くしま》城 次郎左衛門武秋「これは御家老様」 筆頭家老の大村五郎兵衛昌直は、家禄千四十石九斗二升取りだ。 その後に同じく、両家とよばれる一門の大村彦次郎友彰(八百四十六石九斗六升)が続き、...
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第580話 武田大膳大夫勝頼の野望

天正元年(1572)九月二日 甲斐 躑躅ヶ崎館「わしは、其方そなた達あっての武田じゃと思うておる」 武田家第十七代当主で、甲斐源氏二十代目である武田勝頼は、重臣を前にそう言った。 馬場美濃守(信房)に山県三郎兵衛尉(昌景)、高坂弾正(昌信)...
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第18話 『そのころの日本は? 俺が出来る事なんて、たかが知れてる。あれ? お慶さん』(1837/6/1)

天保八年 四月二十八日(1837/6/1) 次郎左衛門 信之助は石けんをいかに簡単に安く大量にできるかを考えている。もちろん品質は変えずに。 お里は和蘭辞書と反射炉製造書を読みながら翻訳中だ。 一之進は領内をまわって食生活と体調の聞き取り調...
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第579話 純正の同盟国の事情。畠山義慶と佐渡の儀。

天正元年(1572)八月十五日 能登 七尾城  発 修理大夫 宛 権中納言 秘メ……○▽■ぐしゃぐしゃぽい……。  平九郎、元気ですか?  いや、最初は例の通信文で書こうとしたんだけど、あれ、いくら暗号っつったってダダ漏れでしょ?  それに...
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第17話 『大村藩の食糧事情とその改善。全国平均ってどうなんだ?』(1837/5/19)

天保八年 四月十五日(1837/5/19) サツマイモ(唐芋)はサツマ(薩摩)、つまり今の鹿児島県に、江戸時代に琉球王国(現・沖縄県)を経て伝来したと言うのが定説だ。 そしてその後、広く栽培されて全国に広まった。 しかし実はそれよりも10年...
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第578話 松前異変

天正元年(1572)八月二日 京都 越後屋近江屋敷 組屋源四郎は気が気ではない。 屋敷の中で待たされてはいたものの、立ち上がっては座り、立ち上がっては座りで、室内をウロウロしている。 やがてゆっくりとした足音が聞こえると、障子があいた。「組...
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第16話 『モリソン号事件を警告しよう』(1837/5/5)

天保八年 四月一日(1837/5/5) 次郎(太田和次郎左衛門)は、長崎から帰ってきてから考え事をしていた。 この時代に転生してから常に考えていたことだが、目的を達成するためには、技術革新だけでは駄目だという事である。 先進技術を持つアメリ...
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第577話 尚元王の死と万暦帝の即位

天正元年(1572)七月十九日 三ヶ月前に、純正の同盟国(通商和親・準安保)である、琉球王国第二尚氏王統の第五代国王である尚元王が崩御した。 特に名君というわけでもなく、普通の王であったが、古来より王朝の代替わりの際には政情が不安定になりが...
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第15話 『西洋学の大家、高島秋帆との出会い』

天保八年 三月二十六日(1837/4/30) 長崎会所(貿易所)調役(監査役)詰所 太田和次郎「御免候! 御免候!」先触れを派遣していたので留守はないはずだ。昨日長崎について、1日だが旅の汚れを落とし、正装して訪問した。詰所は華美でもなく貧...
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第576話 オラニエ公、イスパニアの敗報を知る。

天正元年(1572)六月十六日 史実でいうところの元亀三年六月十六日、ユリウス暦1572年7月10日。(現在の西暦=グレゴリオ暦は1582年に変更されます) オランダ、ネーデルランドと呼ばれる地域で、いわゆるオランダ独立戦争の真っ最中であっ...
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第14話 『目指せ佐賀藩、追いつき追い越せ佐賀藩』(1837/5/18)

天保八年 三月二十四日(1837/5/18) 太田和次郎「はんしゃろ? なんそい?」(反射炉? 何それ?)ああ……それ、そっからかあ~。『反射炉』……幕末に大砲をつくるために幕府(藩)がつくった炉。『江川英龍』……その反射炉を造った人。多分...
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第575話 電気という概念と様々な試行錯誤

天正元年(1572)六月一日『磁気的現象と電気的現象についての考察:天正元年六月一日(注:ユリウス暦1572/7/10):太田和忠右衛門政藤』 そう題された論文の中身を読み返し、頭をひねりながら修正を繰り返しているのは、科学技術省大臣であり...
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第13話 『二十四歳、肥前佐賀藩、十代藩主鍋島直正という男』(1837/4/19)

天保八年 三月十五日(1837/4/19) 玖島くしま城 太田和次郎「よう参った。次郎よ」「ははっ。本日はお日柄も良く、藩主様におかれましては……」「よいよい、わしらだけの時はそう畏まるでない。叔父上方や、渋江や針尾がおったら別だがの……ど...
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第574話 上杉戦の反省と留学生の今後

少し遡って天正元年(1572) 三月三十日 諫早城 織田信忠 小佐々の殿様、権中納言様が上杉と軍いくさをなさっているさなか、春休みという事でわれらはいったん故郷へ帰り、元服を済ませた。 父は今年の三月が中学の終わりで、小佐々の領民は卒業後は...
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第12話 『城内の石けん反対派と純顕の改革』(1837/4/3)

天保八年 二月二十八日(1837/4/3) |玖島《くしま》城「鷲わし之助、少し前より気になっていたのだが……」「なんでございましょう?」 玖島城内で、藩主を除いた会議が行われていた時の会話である。「お主、近ごろ、なにやら良い香りがするが、...
内政拡充技術革新と新たなる大戦への備え

第573話 しばらくは内政に関わろう。技術開発の進捗状況。

天正元年(1572) 五月十五日 諫早城 ・反射炉 ・大砲 ・ライフル ・後装式 ・パーカッションロック……。 ・蒸気機関に蒸気船……。 純正は、ぱっと考えて出てくるものを羅列したが、そのほとんどが兵器に関わるものだった。 上杉との戦争も終...
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第11話 『まずは太田和村だけでの先行製造と、リスク分散で他の産業も考える』(1837/3/16)

天保八年 二月十日(1837/3/16) 太田和村 次郎 灰の原価計算をするのを忘れていたけど、木炭から灰汁を作るとしても@0.7文だったので一文と計算した。 灰の原価、油の原価、そして製造の人件費を入れて@30文だ。 問題は海藻と貝殻の枯...
内政拡充技術革新と新たなる大戦への備え

第572話 純正の帰国と打ち壊しと三職推任問題。

天正元年(1572) 五月七日 諫早城 朝廷に対して佐渡征伐の勅書を願い出てから、発せられたのは諫早に戻ってからであった。 発 治部大丞 宛 権中納言 秘メ 過日ヨリ 奏上奉リケリ 佐渡攻メノ 勅書 下サレケリ 秘メ 発 権中納言 宛 第四...
転生した無名藩士、幕末の動乱を生き抜く

第10話 『いきなりの佐賀藩越え。試供品と大プレゼン』(1837/2/7)

天保八年 一月三日(1837/2/7) 太田和村 (次郎目線) 材料としては灰と油。 そして油の種類によっては固まらず、軟らかい(液体)ものしか出来ないという事で、海藻の灰もしくは消石灰を加えて固形化する。 海藻は海沿いといえど有限だ。 大...
対上杉謙信 奥州東国をも巻き込む

第571話 京見物と能登旅行。越中仕置きに早すぎる社会勉強。

天正元年(1572) 四月二十四日 京都 大使館「ほーれほれほれ、ばあ~」 表情筋がないのか? というくらい顔を緩ませているのは、関白二条晴良である。ここは小佐々の在京大使館で、純正をはじめ舞姫に藤姫、そして子供達がいる。 晴良の娘の藤子が...
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第9話 『+五万石達成!なのか?まずは藩主様から始めよう』(1837/1/21)

天保七年 十二月十五日(1837/1/21) 太田和村 (次郎目線) 製造実験は3人に任せて販売計画を練って、十日が過ぎた。 今月は登城はない。来月の正月の挨拶とあわせて登城し、翌二月から十五日の登城になる。 灰汁の原価計算をして、多めに見...
対上杉謙信 奥州東国をも巻き込む

第570話 決着!上杉戦和睦交渉。大きく動く勢力図。

天正元年(1572) 四月十六日 富山城  口入れとはつまり、介入の事である。 越中はもとより、このまま謙信の勢力が増大すれば、加賀まで及ぶのはわかりきったことである。 また、背後の能登は、そのためには謙信の勢力下にある必要がある。「何か心...
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第8話 『石けんで五万石分利益がでるか? 原価と販売経路その他諸々』(1837/1/11)

天保七年 十二月五日(1837/1/11) 太田和村 (次郎目線)さて、灰はタダだ。無尽蔵にある。あ、待て。確か肥料にも使っていたな。その辺の調整は後から考えよう。大量に使って農業に影響が出るのはまずい。まず儲かるか儲からないか。原価を計算...
対上杉謙信 奥州東国をも巻き込む

第569話 難航する交渉と上杉小佐々代理戦争の余波

天正元年(1572) 四月十五日 富山城  「……他国に軍いくさに出ず、守るに要るだけの最も少なき軍旅を養えればよい、と分きたる(理解している)が、よろしいか」 利三郎のこの言葉が頭から離れない須田満親は、難航した初日を振り返って二日目を迎...
転生した無名藩士、幕末の動乱を生き抜く

第7話 『果たして幕末に石けんは売れるのか? 儲かるなら作るしかない』(1837/1/9)

天保七年 十二月三日(1837/1/9) 暮れ六つ(1717) 雪浦村 冨永館 なんだこれ? どういう状況? ここは雪浦村、雪浦川の河口近くの開けた集落にある、城代冨永|鷲之助《わしのすけ》の館である。 家督を継いでからの鷲之助は玖島城(大...
対上杉謙信 奥州東国をも巻き込む

第568話 フェリペ二世の世界戦略と庄川の戦いの結末へ

天正元年(1572) 四月十四日 イスパニア マドリード王宮 「それが……明のさらに東、ジパングの艦隊にございます」「……使者よ、余は真実を申せと言ったのだ。……嘘やデタラメを申せと言うたのではないぞ!」 フェリペ二世は傍らにあったオブジェ...
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第6話 『まずは五万石を、十万石にしよう。それも手っ取り早く』(1837/1/9)

天保七年 十二月三日(1837/1/9) 明け五つ(0805) 玖島城下~雪浦村信之介と俺は朝餉あさげを食べたあと、船着き場へ向かった。そこから船に乗り対岸の時津村まで行くのだ。時津村についたら北上し、長浦村から山越えし、外海(西彼杵半島の...
対上杉謙信 奥州東国をも巻き込む

第567話 国内と国外~ヌルハチの祖父とフェリペ二世~

天正元年(1572) 四月十四日 岐阜城 「ははっ」 長秀が苦笑いし、光秀や秀吉はわからないようにため息をしている。「さて、加賀の、本願寺の動きはどうか?」「は、謙信からの計略によって引き起こされた一揆にございましたが、それにより本願寺の我...
転生した無名藩士、幕末の動乱を生き抜く

第5話 『そもそも弱小五万石の大村藩が、隣の佐賀藩三十五万石に勝てるのか?』(1837/1/9) 

天保七年 十二月三日(1837/1/9) 明け六つ半(0710) 玖島城下 旅籠 酒は飲んだが、なぜか早起きできる日があるのは前世とかわらない。 酒の相性が良かったのかつまみが良かったのか、頭痛はない。不思議だ。ともあれ空が明るくなる前に目...
対上杉謙信 奥州東国をも巻き込む

第566話 中止できず。人道支援と織田の評定。

天正元年(1572) 四月十四日 越後沖 霧島丸「小佐々海軍、第四艦隊司令長官、佐々清左衛門にござる」「上杉家家老、直江大和守にござる」 テーブルに向かい合って相対する二人に、珈琲が運ばれてきた。戦場で敵方の使者が来たというのに、余裕の態度...
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第4話 『転生早々いきなりの無茶振りと、大村藩影のフィクサー誕生』(1837/1/8) 

天保七年 十二月二日(1837/1/8) 明け八つ(1336) 玖島城「さて次郎よ、人払いしたのは他でもない。そなたに頼みがあっての事なのじゃ」 俺はもの凄く嫌な予感がしたが、まずは聞いてみる事にした。「ははっ。それがしに能う事なれば、何な...