第26話 転生人から674石の領主へ

 家督をついだ。実感は、あまりない。儀式は滞りなく終わった。小佐々の殿様にも家督相続の報告に行ったが、喜んでくれた。親父が存命中だから、てっきり相続前に反対するかと思っていた。

 ……親父め、裏から手をまわしやがったな。

 親父とはあれから、いい意味で気まずい雰囲気が漂っている。当の本人は全く意に介していないようだが、気恥ずかしい。まあ、前世でできなかった分、親孝行しよう。

 親父は奇跡的に一命をとりとめた。前世でいうところの敗血症? 感染症? の症状は、いまのところない。しかし安心はできない。前世とはなにもかもが違うのだ。用心に用心を重ねて、重ねすぎる事はない。

 ペニシリンをつくろう! そう思った。抗生物質といえばペニシリンだ。昔漫画とドラマでみた。確か、この時代の技術でもできるはずなんだ。(あれ? もっと後だったか? 記憶があいまいだ)。

 だが、だがしかし! 問題なのは、歴史の知識は確かにチート級かもしれないが、その他の事はまったくの素人なのだ。そしてもちろん、俺は医者でも看護師でも、薬剤師でもなかった。

 当たり前だ。ふっつーのサラリーマンだったんだから。医療はもちろん、産業、技術、その他諸々、オーバーテクノロジーを生み出すチート知識なんて、まったくない。俗に言う広く浅くってやつだ。

 確か、青カビを集めて、米の研ぎ汁ともう一つ、なんだったか、確か培養? まぜてやるんだ。それからその、培養した物を……混ぜる? あ! 菜種油だ! 濾過して、沈殿した物を抽出する。

 ……小分けにした青カビにたらして、……カビが死んでる物があったら、それが確かペニシリンだったと思う。

 ざっくりしすぎてできる気がしないけど、それでも半年、一年、五年十年かかっても、つくる。しかもそれには金がかかる。やらなくちゃいけない事が山ほどある。

 今すぐできる事、優先順位を決めていこう。

 一、重要で緊急性の高い仕事。
 二、緊急ではないけれども重要度が高い仕事。
 三、重要度は低いけれども緊急性が高い仕事。
 四、重要度と緊急性が低い仕事。

 あ、小平太、マツばあちゃん呼んできてくれる?

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