1986年5月26日(月) PM6:30 美咲の自宅 <風間悠真>
美咲の家まではいつもどおりの道を通ったんだが、今日はなぜか神社には立ち寄らなかった。
神社は休憩場所。
というよりも2人の暗黙の了解で、会話はするけどエッチな行為もする秘密の場所になっていたからだ。
無意識のうちにそういう行為を期待していたのか、それとも休憩とおしゃべりなら家でゆっくりできると考えたからなのか。どっちかわからないが、ともかく直接家に向かった。
なんだかドキドキした。
なんでだ?
美咲の家は2階建てで、その2階が美咲の部屋になっている。
前に勉強で来たときは母親がいたが、今日はいない。
玄関を入ると、高級そうな(だと思うが、よくわからん)調度品が整然と並んでいる。美咲の両親が共働きで収入が良いことは以前から知っていたが、改めて見るとオレの家とは格が違うな。
凪咲の家も純美の家も、礼子の家だってそうだ。
子どものときの妙なコンプレックス。
まだ行ったことはないが、菜々子の家も絵美の家もそうなんだろう。
「上がって、上がって」
美咲が嬉しそうに案内する。リビングには大きなソファとテーブルがあり、勉強するには十分すぎる環境だった。
「飲み物何にする? コーヒー? 紅茶? ジュース?」
「ジュースでいいよ」
両親がいないから、1階のリビングで勉強する、ようだ。多分。
美咲がキッチンに向かう間にオレはリビングを見回した。
そう言えば前回は2階だったから、あまりマジマジとは見ていない。家族写真が飾られていて美咲の笑顔が印象的だ。51脳が冷静に状況を分析している。
両親不在の自宅に2人きりの環境。
美咲の意図は明らかだった。
まあ、オレにとっては願ったりかなったりだけど、急にどした?
「はい、どうぞ」
美咲がオレンジジュースを持ってきて、オレの隣に座った。いつもより距離が近い。
「それじゃあ、数学やろうか」
「うん」
なんだか会話がぎこちない。
4月18日に初めて手コキを凪咲にしてもらってから、美咲・純美・礼子と順調にしてもらっている。その時だけじゃない。毎日の下校時には必ずだ。
いや~、元気な中学生。
20代の男はサルだって誰かが言っていたが、10代の中学生はそれ以上だろう。1日に5回してもまだ元気?
オレは次の段階、そう、フェラチオをいつさせるか(してもらうか、ではない)を考えていたんだ。
今日か?
まだ1か月しか経ってないけど大丈夫か?
いや、雰囲気と勢いだろこんなもん。
51脳は冷静に分析しているが、13脳はやってもらいたい気持ちで鼻息が荒い。
オレは13歳の体を理性で制して冷静を装っているんだ。
机の上には教科書とノート。
勉強道具は一応広げられているが、美咲の手はページを開かない。
代わりに、左手は無意識にシャープペンを指の間でクルクルと回していた。
沈黙が部屋を包んでいるからカチカチと秒針が時を刻む音だけが異常に大きく感じる。
「じゃあ昨日の続きね」
オレがもう一度声をかけて教科書を開いたら、美咲も慌てて自分のノートを広げた。でも明らかに上の空だ。
ん?
もしかして美咲も意識しているのか?
勉強会は自分から誘ったんだぞ?
それでやる気がないなら、もう、やらせるしか、ないだろ? (オレは悪くない)しかし、集中力が明らかに欠けていた。
「この方程式なんだけど……美咲、聞いてる?」
「あ、うん。……聞いてる聞いてる」
美咲の返事は棒読みだった。
美咲は膝の上で両手を強く握りしめている。まるで緊張と不安で体が硬直しているみたいだ。
何だ?
何を考えている?
オレはそう考えた瞬間――。
「悠真さ。由美子先輩って知ってるよね?」
「へっ?」
美咲の唐突な問いかけに、思わず変な声が出てしまった。
「由美子先輩って、あの? バレー部の先輩で生徒会だった人……のこと? それがどうしたの」
ここでまったく関係のない卒業生の先輩の名前が出たことで、フェラチオどころか一緒に風呂に入ってシックスナインまでして、今まで何回も行為をしたことが脳裏に浮かぶ。
オレがギクッとしたのは、その情報が一瞬で頭を巡ったからだ。
「あのね……」
美咲はもじもじしている。
由美子先輩はオレにとっても美咲たちにとっても、色んな意味で特別な存在だ。
なんせ夏の海の家でのバイト中に、大学生? 高校生? とセックスしているのを目撃したんだからな。
そんでもって、その目撃を美咲たちにさらに目撃されていたからだ。
中学生には刺激が強すぎるよ。
「美咲、言いたいことがあるなら、遠慮なく言っていいよ。落ち着いて、深呼吸して……」
オレは嫌ーな予感がした。
だいたい、嫌な予感って当たるんだよな。
「あのね……私、いや私たち……なんだけど、あの……見たの」
ん?
見たって何を?
「え? ……何を?」
「その……由美子先輩が悠真に……その……してるとこ……」
美咲は複雑な表情をしているけど、頑張ってそこまで言って、それから口をつぐんだ。
やべー。
どうしよう。
こんなとき、なんて言ったらいいんだ?
ごまかすんじゃなく、事実をそのまんま言えばいいか……?
オレが先輩にお願いしたわけでもないし、あの状況でパニクっちゃってどうしようもなかったって言えば……。
実際は51脳はびっくりしたが正常で、13脳がテンパって性欲に身を委ねていたのが事実。
でも、ありのまま作戦しかないな。
言い逃れは出来ないし、話がややこしくなる。
「ああ、あれか……」
オレはしばらく間をおいた。
立て板に水みたいにペラペラ喋ったんじゃ真実味もないし誠意も感じられないだろう。
「実はさ……」
オレは先輩に呼び出されたこと。
いきなり壁ドン(この時代にはないがオレは使ってた)されたこと。
いきなりスボンを降ろされて、訳が分からないままフェラチオされて終わってしまったこと(本当はしっかり分かっていたが)。
そのプロセスを、ゆっくり、途切れ途切れになりながら、美咲の顔を見てはそらしながら全部話した。
「……その後は? その後は何もないんだよね?」
ある!
ばっちりがっつりある! が……。
ここは言わないほうがいい。
嘘をつくのと正直に話すのとは、境界線が難しい。
嘘も方便とはよく言うし、話してほしかった、はこれもよく聞く話だ。
何にしても51脳なら理解できるが13脳に理解できるはずがない。
オレは話さない、と決めた。
話したところで何か状況が変わるのか?
そもそも倫理観で言えば6人ハーレム(6股ではない)している時点で社会的にはどうなの? って話になる。
それにオレが黙ってさえいれば、由美子先輩がわざわざ話すことはないだろう。
美咲にしたって聞くはずない(だろう、多分)。
「うん、ないよ」
「……そう、わかった。それなら……」
美咲はそう言って体を寄せてきた。
「え? 何?」
「あのね、私、負けたくないの」
「え? 負けたくないって……。いや、由美子先輩と勝ち負けって……」
「他の5人も由美子先輩も同じ。今は悠真は私たちだけのもの。でも、由美子先輩ってキレイで性格もいいしスタイルもいいから……ね?」
ね? って、もしかしたら将来そういう関係を持つかもしれないって心配しているのか?
「だから、悠真の好きなこと、してあげたいの」
まあいいや、追い風だ。
何だかわからんけど、オレが色々考えるよりいい感じになってきたぞ。
「美咲……」
「いいでしょ? 誰もいないし」
美咲の手がオレの太ももの上にある。
こうなると、いつもの手コキに進む流れだ。
オレのズボンのベルトを外してファスナーを下ろし、パンツも脱がしていく。
最初は恥ずかしがっていたが、今では手慣れている。
13脳と身体は正直だ。
それだけではち切れんばかりに勃起している。
美咲が小声でつぶやきながら優しく握った。手のひらの温かさと柔らかさがオレのを包み込む。
「気持ちいい?」
「うん……」
美咲の手が上下に動き始めた。
以前よりも慣れた動きで、オレの反応を確かめながら続けている。
女ってすごいな。
年齢関係なく、やっぱり経験なんだろうか。
しかし今のこのシチュエーションすげえな。
女の子の自宅(しかも実家!)のリビングの椅子に座ったオレのナニを、女の子が横に座ってシゴいている。そしてこの先はまるでAVのシチュエーションだよ。
時代を40年先取って。
いや、これ自体は当時(今)すでにあったのかもしれない。
「ねえ、悠真」
そんなどうでもいいことを考えていると、美咲が聞いてきた。
「どうすればいいの?」
「え? あ、じゃあ、ゆっくりでいいから……優しく口に含んで」
51脳の経験を基に、ゆっくりじっくり指導しているんだが、最初のフェラがこれって、ちょっとあんまりかな?
普通は(知らんけど)お互いにシャワーを浴びて、きれいな体でするもんじゃねえか?
いや、フェラだけなら別にチャック下げるだけでもOKだから、そんなことはないのか?
美咲が恐る恐る舌を伸ばして、先端をペロッと舐めた。オレの体がびくっと反応する。
うひょっ!
13脳と身体が敏感に反応して声を出すのを必死で我慢する。
「くすぐったい?」
いやいやとんでもないっ!
「気持ちいいよ……」
美咲が安心したような表情を見せ、今度は口を大きく開けて含んだ。
!
! !
! ! !
オレの理性が飛びそうになった。
温かく柔らかい口内の感触が、13歳の未経験な肉体を襲ったんだ。血流が一気に集中し、美咲の口の中でガチガチに硬くなった。
「んっ!」
美咲は驚いて口の中の異物に戸惑っている。
「大丈夫? 苦しかったら離していいから」
もしここに51脳がいなかったら、こんな言葉は出てこない。
まじでイってる。
トリップ?
オレがギリギリ保って声をかけると、美咲は首を振った。
口に含んだままオレを見上げている。
「ゆっくり……そのまま上下に動かして……歯を立てないように」
オレの指導に従って美咲が頭を前後に動かし始めた。不慣れでも一生懸命に続けている。
こうなると、もう早い。
51脳では経験済みでも13歳の敏感な肉体は別だった。
美咲の口の中の温かさと湿り気、舌の動きが刺激となって伝わってくる。
「美咲……オレ……もう」
警告しようとした瞬間に限界が来た。
3分もたってない。
カップラーメンじゃねえか。
勢いよく美咲の口の中に白い液体が放出された。
「んぐっ!」
美咲が驚いて目を見開いた。
液体が喉の奥に当たって反射的に慌てて性器を口から離すと、手で口を押さえて激しく|咳《せ》き込んだ。近くにあったティッシュボックスを取って、口の中の液体を吐き出している。
「ゲホッ、ゲホッ……」
「ごめん! 大丈夫?」
オレは慌てて美咲の背中をさすった。美咲は涙目になりながら咳き込み続けている。
「苦い……臭い……」
正直!
あまりのことにテンパってそのまま言葉が出たようだ。
「本当にごめん。いきなりで……」
オレが正直に謝ると、美咲は手で口を拭いながら首を振った。
「ううん……私が慣れてないから」
その後、しばらく気まずい沈黙が続いた。
当然だな。
美咲はティッシュで口の周りを拭いて、オレはズボンを履き直した。
「でも先輩、慣れてる感じだった。私みたいにむせてなかった」
美咲の声には嫉妬が混じっていた。
「いや、それは……初めてなんだし……」
フォローなのか何なのか、よくわからない。
「でも、悠真はこれ、気持ちいいんでしょ?」
「うん……」
そこは正直。
美咲の表情が複雑に変化した。
嫉妬と悔しさ……いや、何かの決意が混じってるのか?
さすがの51脳でもそこまでは分からない。
「私、頑張るから」
「え?」
「先輩に負けたくないの。だから、もっと上手になる」
あ、はーい。
うん、頑張って!
大いに頑張って!
「無理しなくていいよ」
「無理じゃない。悠真が気持ちよくなってくれるなら」
時計を見るともう9時を過ぎていた。
さすがにヤバい。
何事もなかったかのように帰った方が無難な時間帯だ。
「そろそろ帰った方がいいな」
「うん……」
美咲は少し残念そうだった。
「ありがとう、悠真。勉強教えてくれて」
何に対してのありがとうなのか分からないが、こう答えるしかなかった。
「うん、また明日」
「また明日」
家を出るときには美咲の表情には満足感が浮かんでいた。
由美子先輩に追いついた、他の5人より先に進んだという自信なんだろうか。
さて、明日は凪咲だ。
ちょっとここは、じっくりいった方がいいかもしれない。
次回予告 第89話 (仮)『凪咲の対抗心』

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