固唾

転生した無名藩士、幕末の動乱を生き抜く

第468話 『悪魔の証明』 

慶応五(明治二)年四月一日(1869年5月12日)「……そうか。出納帳を出せと」 慶喜の声は意外なほど落ち着いていた。「金の出入りが真でも案ずるには及ばん」 最初は驚きを隠せなかったが、じっくり考えた慶喜の答えはこうであった。 ――幕府の極...
『自宅のトイレが異世界に!転生者の美女2人と男1人に出会ったので、現代技術を使って産業革命を起こすことにしました』

第5話 『夜が明けて』

異世界暦〇〇年〇〇月〇〇日=2025年9月6日(土)? <田中健太・52歳> 目が覚めた。 窓から心地よい朝の光が差し込んでいる。 チュンチュンチュン……。「あなたー、ご飯できてるわよ。起きてー」 レイナの声が階下から聞こえてくる。 そうだ...
転生した無名藩士、幕末の動乱を生き抜く

第467話 『逆転の一手』

慶応五(明治二)年四月一日(1869年5月12日)「それがしの不徳の致すところ。誠に申し訳ございませぬ」 詮議が終わって半刻ほど過ぎた頃であった。 京都に構える大村藩邸の一室で、根岸主馬が畳に額を擦り付けんばかりに頭を下げている。 その声は...
外伝!フレデリック・ヘンドリック転生記~時代・技術考証や設定などは完全無視です!~

第33話 『煉瓦』

1591年11月 オランダ アムステルダム「よし、方針は決まった。オレたちは鋼鉄を作る。この時代にはまだ存在しない、全く新しい価値をオレたちの手で生み出すんだ」 アカデミーの会議室は、これから始まる巨大な事業への緊張感に満たされていた。「ハ...
『新しい国 ―空母飛龍から、最後の戦いへ―』

第17話 『政権交代』

令和9年7月下旬 総理暗殺の衝撃が冷めやらぬ官邸の一室には、閉ざされたカーテンと沈んだ空気が漂っていた。 岩西猛外務大臣は腕を組み、机の上の湯飲みに鋭い視線を向けたまま、何も言わない。 久米義政官房長官は、総理代理として緊急対応に追われ疲れ...
信長と純正、そして教え子たち

第910話 『世界を繋ぐ線』

慶長七年九月二十五日(西暦1602年10月11日)リスボン「……重要な提案があるんです」 その言葉がセバスティアンの注意を強く引きつけた。イタリア商人たちが退出した後に執務室は急に静かになったが、すでに関心は新しい提案に移っている。 「今後...
『新しい国 ―空母飛龍から、最後の戦いへ―』

第15話 『国会の嵐(前編)』~政権の黄昏~」

令和9年5月(2027年5月) 国会議事堂 4月の衝突事件から1か月が経過しても国会の熱気は収まらない。 折からの裏金問題や様々な政策への批判が、各党の党首から政権与党である自由保守党の総裁へ、矢継ぎ早に続いている状態であった。 SNSが普...
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第15話 『国会の嵐(前編)』~政権の黄昏~」

令和9年5月(2027年5月) 国会議事堂 4月の衝突事件から1か月が経過しても国会の熱気は収まらない。 折からの裏金問題や様々な政策への批判が、各党の党首から政権与党である自由保守党の総裁へ、矢継ぎ早に続いている状態であった。 SNSが普...
転生した無名藩士、幕末の動乱を生き抜く

第456話 『スコットランド商人のささやき』

慶応四年十一月中旬(1868年12月下旬)「おや、井上さあと伊藤さあじゃなかと? どげんしたと?」 開国の影響を受けて西欧と東洋の文化が混在する国際都市長崎で、出島の多様な商業活動の騒音から距離を置いた丸山の静寂に包まれた高台に、その料亭は...
転生した無名藩士、幕末の動乱を生き抜く

第454話 『勅許と激震』

慶応四年十月二十九日(1868年12月12日) 京都 岩倉邸「~との由にて、麿まろが草(下書き)をしたためて奏上いたしましゃる。近々に主上おかみより宣旨が発せられましゃる」 ! な、なんて? なんて言った? 殿が正四位下で近衛大将このえのだ...
外伝!フレデリック・ヘンドリック転生記~時代・技術考証や設定などは完全無視です!~

第30話 『金融革命~オランダに現れた銀行と証券取引所~』

1591年8月15日(天正19年6月26日) オラニエアカデミーの一室 フレデリックたちはコルネリス・ピーテルスゾーン・ホーフトをアカデミーの一室に案内して商談し、その後メンバーで相談するために別室に移動して議論を交わしていた。 アカデミー...
『新しい国 ―空母飛龍から、最後の戦いへ―』

第14話 『緊迫の尖閣』

令和9年4月8日(2027年4月8日) 東シナ海 尖閣諸島周辺海域 横須賀で編成式が執り行われていた、まさにその時。 東シナ海の尖閣諸島、魚釣島周辺海域は一触即発の緊張に包まれていた。 巡視船『あさづき』の船橋内の空気は張り詰め、田中は双眼...
転生した無名藩士、幕末の動乱を生き抜く

第448話 『長州を救う密約』

慶応四年九月三日 夜更け 京都 大村藩邸 日付がまさに変わろうとする刻限であった。 自室に長州藩の家老・周布政之助と重臣・久坂玄瑞を残し、次郎は純顕の私室へと続く廊下を速足で進んでいく。 静まり返った屋敷に、次郎の足音だけが響いた。その歩み...
転生した無名藩士、幕末の動乱を生き抜く

第442話 『典薬寮と権力闘争』

慶応四年八月十一日(1868年9月26日) 「ふう」 次郎は、書き上げたばかりの『重要技術管理法案』の草案から顔を上げた。 新暦に直すと9月末だが、それでも残暑が厳しい。 洛中らくちゅうの連続ボヤ騒ぎに関する加賀藩からもたらされた情報は、犯...
転生した無名藩士、幕末の動乱を生き抜く

第438話 『顛末とこれから』

慶応四年五月三日(1868年6月22日)「申し上げます。禁裏御守衛総督屯所より上使がお越しになりました」 張り詰めた声が静かな部屋に響く。純顕が短く応じた。「お通しせよ」 初夏の陽光が障子を通して柔らかく差し込む中、大村藩邸の奥座敷には純顕...
転生した無名藩士、幕末の動乱を生き抜く

第425話 『決別か否か』

慶応四年(明治元年)二月二十八日(1868年3月21日) 江戸城「はて、それがしは何も話す事はございませぬ。次郎、そうであろう」「は、はは……」 次郎は、ここは純顕に任せた方がよいと考えたのか、相づちをうったのみである。「安藤殿、中納言様、...
一強からの変化

第883話 『寿命と病状と織田家中』

慶長五年一月二日(西暦1600年2月16日) 岐阜城 年が明けて慶長五年となったが、年賀の挨拶どころではない。 信長の病状がまったく変わらず、その病状も秘匿されていたので、織田家中はおろか領内でも不穏な噂が飛びかっていたのだ。 当主である信...
一強からの変化

第878話 『根深き溝』

慶長四年十月十五日(西暦1599年12月2日) 大日本国議会「第二に、身分の仕来りじゃ」 純正は話を続けた。「肥前州では武士や町人、農民の別なく学び、求めればいかなる職で働いても良い。才ある者は身分を問わず登用する。商人でも農民でも、優秀で...
一強からの変化

第876話 『佐世保電信開通と大日本国の動向』

慶長四年八月十五日(西暦1599年10月4日) 肥前国佐世保「接続完了!」 太田和源五郎の声が、佐世保の電信局に響き渡った。 諫早から佐世保まで、約56.5kmにわたって敷設された電信線が、ついに開通したのである。 当初は4月に完成予定だっ...
八紘共栄圏を目指して

第869話 『守りなき竜』

慶長四年四月十二日(西暦1599年6月4日)アスト部領域との境 チャハル部臨時宿営地 春の嵐が過ぎ去った草原に、朝の光が差し込む。 20ほどのゲルを中心に、その外側には馬と家畜の柵、さらにその外には見張りの塚が置かれていた。 中央の大きなゲ...
転生した無名藩士、幕末の動乱を生き抜く

第405話 『武士の商人化、商人の武士化』

慶応三年五月十八日(1867年6月20日)フランス・パリ パリ万博の日本パビリオン内に設けられた小さな会議室。 緊張感と熱気が入り混じる空間で、渋沢栄一主催の研究会が始まろうとしている。 この集まりは、当初大々的に開かれる予定であったが、現...
『転生した以上、幼馴染+αと美少女ハーレムをつくってイチャラブ学園生活を送ると決心したオレ』

第75話 『辞めます騒動』

1986年(昭和61年)5月3日(土)~5日(月) 話は少しさかのぼって連休2日前の木曜日の放課後、練習が終了して下校時間を迎えた体育館裏。 コンクリートの壁を拳でたたく音が響いた。「くそっ! ったく、やってらんねえな」 その声の主は3年の...
転生した無名藩士、幕末の動乱を生き抜く

第401話 『移動と計算の革命』

慶応三年五月十一日(1867年6月13日)万博会場 晴れ渡ったパリの朝。 日本パビリオン前には前日を上回る長蛇の列ができていた。昨日の電灯実演の評判が市内に広まり、多くの見学者が詰めかけている。「兄上、もう門前にこれほどの人が……」 隼人が...
八紘共栄圏を目指して

第865話 『電信の実験とフレデリック・ヘンドリック』

慶長四年二月五日(西暦1599年3月2日)科学技術省 技術開発研究所 太田和源五郎秀政は夜明け前から実験準備に没頭していた。 目の前には、改良を重ねた電信装置が置かれている。2本の銅線と新型電池、そして信号を記録するための装置が綿密に配置さ...
転生した無名藩士、幕末の動乱を生き抜く

第399話 『音と映像の革命』

慶応三年五月十日(1867年6月12日) 朝から快晴に恵まれたパリの空の下、万博会場では日本パビリオンの公開初日を迎え、正面入口には早朝から長蛇の列が形成されている。 四月一日の万博開幕から一ヶ月以上がたち、すでに各国の展示が注目を集める中...
転生した無名藩士、幕末の動乱を生き抜く

第381話 『実は黒字でいざゆかん万博へ!』

慶応二年九月二十日(1866年10月28日) チュイルリー宮殿の一室は、異様な熱気に満ちていた。 中央の大きなテーブルには、駐日フランス帝国公使レオン・ロッシュからの報告書と、それに添付された写真が広がっている。 ナポレオン三世(シャルル・...
転生した無名藩士、幕末の動乱を生き抜く

第373話 『その後』

慶応二年一月二十四日(1866年3月10日) 京都病院「まずは気道の確保、それから酸素投与だ」 一之進は洪庵の顎を持ち上げ、気道を確保する。 助手はすぐにガラス容器とチューブ、マスクを組み合わせた原始的な酸素吸入器を装着した。シュコシュコと...
『新しい国 ―空母飛龍から、最後の戦いへ―』

第7話 『情報統制と非公式法整備』

2025/1/30(令和7年1月30日) 海上自衛隊 佐世保地方総監部 山口と加来、そして隊司令の小松と艦長の石川が出迎えた7名の正面に座り、聴取が行われた。 会議室には緊張感が漂っている。 時を超えてきた軍人たちと、彼らを受け入れる現代日...
転生した無名藩士、幕末の動乱を生き抜く

第351話 『経済調整金と、証人喚問の是非』

慶応元年三月十二日(1865/4/7) 約320万ポンドの賠償金であるが、これは本国に伺いをたてるとの返事であった。 さらにガウワーは、賠償金ではなく『経済調整金』『経済復興支援金』を使うよう条件をつけている。  経済調整金? 経済復興支援...
転生した無名藩士、幕末の動乱を生き抜く

第340話 『ヴィクトリア女王とイギリス議会、そして朝廷からの叙位任官』

元治元年八月十五日(1864/9/15) イギリス ロンドン バッキンガム宮殿「首相、いえ、パーマストン卿きょう、もう余が聞きたいことはわかっているでしょう? 毎日毎日、市井を賑にぎわせている噂を聞いたのだけれど、さすがに噂でこれだけ盛り上...
転生した無名藩士、幕末の動乱を生き抜く

第330話 『ロシア艦隊と』

元治元年四月十一日(1864/5/16) 蓋井島沖 -発 彦島信号所 宛 大村艦隊並前田台場 敵小型艦海峡進入せり 水深測定ならびに周囲の偵察と認む-「ふむ、やはり慎重策をとるか」 次郎は長州藩に砲台の砲と艦載砲の変更と同時に電信網の敷設協...
大日本国から世界へ

第744話 『アルマダの海戦の敗北とカリカット総督府』

天正十七年六月二十四日(1588/8/16)「な、なんだと? そんなバカな……」 フェリペ2世はアルマダの海戦の敗報を絶望と共に知った。 手から報告書が滑り落ちて床に散らばるが、側近たちは固唾をのんで王の反応を見守っている。やがて彼は深く息...
天下百年の計?

第728話 『毛利だけの優遇措置とも言える』

天正十四年五月二十二日(1585/6/19) 諫早城 100万石を超える毛利の所領の差配は簡単ではない。もちろん、前述のように警察機構は独立して各国に設置され、各郡、各村に署を置き派出所をおいて治安維持にあたっている。 しかしそれ以外は自治...
技術革新と内政の時、日本の内へ、外へ

第669話 『上杉景勝と上杉景虎。そして氏政への上洛命令』(1579/5/27) 

天正八年五月二日(1579/5/27)  越後の龍、上杉謙信が死んだ。その知らせは越後のみならず近隣諸国に知れ渡り、周辺の諸大名はその動静を固唾を呑んで見守り、あるいは行動に移した。 が、今世は違った。 純正が信長と同じ立場で東に武田と上杉...
北条と東北。明とスペイン、欧州情勢。

第637話 『通商破壊か、要塞各個撃破か、サン・ペドロ要塞壊滅か』(1578/1/9)

天正六年十二月二日(1578/1/9) マニラ 小佐々軍駐屯地 「……さて、こたびの作戦目標であるが、皆も知ってのとおり、明とイスパニアの同盟が明確になった以上、機先を制してこのアジアからイスパニア勢力を駆逐する事にある」 海図を前に、全員...
内政拡充技術革新と新たなる大戦への備え

第589話 終戦決定と責任。そして大国の拒否権発動。

天正二年 一月十七日(1573/02/19) 近江国蒲生郡  日ノ本大同盟合議所『日ノ本大同盟』の憲章、そして細部規約の制定と同意のための会談も大詰めである。 ・終戦の可否とその時期の決定基準 ・大同盟軍内での各国(甲)の作戦行動による各国...
第2.5次信長包囲網と迫り来る陰

第476話 甲斐武田家第十七代当主、諏訪四郎勝頼改め武田勝頼

元亀二年 九月十日 躑躅ヶ崎館(さて、どうするか……) 勝頼は、夜も更けた躑躅ヶ崎館の居室にて、二人の家臣を前に考えている。 信玄の死後家督をついだものの、あくまで名代。 対外的には信玄は隠居して勝頼が家督を相続、そして息子の信勝が十六歳に...
第2.5次信長包囲網と迫り来る陰

第432話 負の連鎖を断つとき

元亀元年 十一月二十二日 伊予 湯築城 宇喜多家と宇喜多直家をどうしたいのか?  純正の問いに三村元親は即答できない。父を殺した憎き敵が目の前にいるのだ。どんな形でも良いから仇を討ちたいはずなのに、なぜか答えられない。「それは……」 一同が...
第2.5次信長包囲網と迫り来る陰

第429話 西国騒乱!?史上最悪の兄弟喧嘩。完膚なきまでに叩きのめされる。

元亀元年 十一月十五日 吉田郡山城「本気で呑むというのか、隆景」 諫早城で純正との会談を終えて戻ってきた隆景は、輝元と元春、ならびに恵瓊ほか数人の重臣にその内容を告げた。 小佐々と四分六(毛利が四:感覚的な表現)の同盟を結ぶことを提案してい...
新たなる戦乱の幕開け

第405話 元亀元年度 小佐々家定例閣僚ならびに理事会

元亀元年 六月十日 諫早城 「次に大蔵省だが、弥市、なにかあるか」「は、それでは申し上げます。歳入と歳出に関しまして、領国の拡大にともない、年貢米の徴収が増え、歳入は増加しております」 うむ、と純正。「しかしながら、歳入増加の要因の多くは、...
西国の動乱、まだ止まぬ

第370話 フロギストン説と酸素説 留学生の熾烈な眠気との戦い

永禄十二年 十一月 肥前 純アルメイダ大学 化学部 講義室 「さて、今日は原点である化学とはなんぞや? という事について考えていきたいと思います」 そう語るのは、純アルメイダ大学の化学部教授の宇田川松庵である。 第二期遣欧留学生としてヨーロ...
肥薩戦争と四国戦役

第346話 九州平定セン、然レドモ先ハ尚長シ……。

十月十九日 巳二つ刻(0930) 日向国紫波洲崎村(宮崎市折生迫)  三人が全員そろうまで、四日かかった。伊東祐青は自領内での開催もあって、通達が届くのは一番遅かったが、十六日に紫波洲崎城へ挨拶にきていた。 純正は城内に案内され城で過ごすよ...