第82話 『キスとハグの菜々子』

 1986年(昭和61年)5月8日(木)<風間悠真>

 オレの目標は6人全員と中学卒業までにセックスすることだ。

 と、いうことは、6人中で一番遅れている菜々子と絵美との関係を進展させる必要がある。

 菜々子とはキスまでしているから、次は胸を触っても抵抗がないようにしなくちゃならない。絵美にいたってはキスすらない。

 ハグだけだ。

 そこでオレはしばらくは他の4人との関係より、菜々子と絵美の関係を深めようと考えた。

 あ、いやいや、ちゃんとヌイてもらうよ、4人には。

 そっから先の段階にはペースを落としていくだけの話。

 放課後――。

 自転車2人乗りのおっぱいむにゅむにゅ計画が終わったとはいえ、自転車は必須のツールだ。

 2人乗りの頻度は減ったが、別れてから自宅までの時間を短縮しなくちゃいけない。

 今日もオレは、いつもどおりバンドの練習が終わると菜々子と待ち合わせした。

 最初に礼子と待ち合わせしたときは、みんなに見つからないように裏口の階段で待っていたもんだが、曜日制登下校システムを開発してからは、大っぴらに待てる。

「ごめーん! 待ったぁ?」

「あー、待った待った。待ちくたびれたよ!」

「え、あ……ごめんなさい」

「あー、ウソウソ! 菜々子を待ってる時間なんて、いっつもドキドキだよ」

 オレの茶化したような、それでいて本心とも取れる言葉に、菜々子は一瞬きょとんとした顔をした後、すぐに頬を赤らめた。

「な、なに言ってんの……」

 うつむき加減になった菜々子を見ながら、オレの51脳は『よし、反応上々』と分析し、13脳は『カワイイ……』と純粋な喜びを感じていた。

 今日の菜々子は、ポニーテールにした長い髪が、風に揺れるたびにサラサラと光っていた。制服のスカート丈は、以前より少し短くなっているように見える。

 気のせいだろうか? 

 いや、春休みの終わり頃から、少しずつ短くなっているのをオレは知っていた。

 いーねえ、ミニスカート。

 めくりやすいしパンツが見えやすい。 

 それはつまり、脱がせやすい=ヤりやすいってことだ。

 生足もいい。

 ていうか今の(前世の)女子中高生はどうか知らんが、オレの記憶どおり、ストッキングなんて履いてない。

 まあ性癖で破りたいヤツはいるかもしれんが、あいにく(?)オレにはそんな性癖はない。

「ホントだよ。菜々子とこうして二人きりで帰れるの、すごく楽しみなんだ」

 自転車を押しながら、オレはゆっくりと歩き出した。

 菜々子はオレのすぐ隣を、少し照れた様子で歩いている。

 登下校デートでも、デートには変わりない。

 そして2人の方が、6人よりも断然いいのだ。

 まず、使う労力、つまり必要な脳力量が格段に違う。

 6分の1なんだから当然だ。

 帰り道には礼子と休憩する神社があるが、菜々子の家はそれよりも近い。

 名もない公園に立ち寄る。国道から県道に入って少し入り込んだところだが、周囲はフェンスで囲われている。

 砂場はない。

 シーソーとジャングルジム、そしてベンチ。

 いったいここは公園なのか?

 それとも誰かの私有地なのか?

 学校からの帰り道で通るんだから、別に礼子も菜々子も絵美も、同じ場所でいいんじゃないか思うんだが、なんだろう?

 そういう行為をするから、お互いにバレないように無意識に選んでいたんだろうか?

 学校からの距離は絵美、菜々子、礼子の順に遠くなる。

 そしておあつらえ向きに絵美の家までに使われていない廃工場(絵美用)、菜々子の家までに公園、礼子の家までに神社があるのだ。

「ねえ悠真……」

 菜々子が遠慮がちにオレの名前を呼んだ。

「ん? どうした?」

「佐世保で……ぬいぐるみ、ありがとう」

 菜々子は手に持ったカバンをぎゅっと握りしめながら言った。

「ああ、あれね。菜々子が勝ったんだし、それに喜んでくれてよかった」

「うん……。私、ああいうふうにプレゼントされたの初めてだったから……嬉しかった」

 そう言って菜々子は少し恥ずかしそうに笑った。

 ん?

 初めてって生娘じゃあるまいし。

 いや、実際生娘なんだが、プレゼントもらったことがないって……。

 あ、いかん。51歳の感覚で考えちゃいかん。

 今は2人とも13歳なんだから。

 それにしても可愛いなぁ……。

「だからね……悠真にお礼したいと思って……」

「お礼?」

 オレは思わず聞き返した。

「うん……」

 菜々子は少し躊躇しながら言った。

「あの……前に悠真がキスしてくれたでしょ……? だから……」

 菜々子は恥ずかしいのか、声が小さくなった。

 うん、そうだよー。

 何回もキスしたじゃん。毎日。

「今日は私が……キス……してもいい?」 

 きたー!

 菜々子からキスを求めるなんて!

 その瞬間、オレの心臓はバクバクしだした。

 これはチャンスだ!

 51脳がフル回転で計算を始める。

 焦りは禁物だが、チャンスだ。

 ここは……もにゅっといくしかない。

「うん……いいよ」

 オレは菜々子を引き寄せ、菜々子はオレの頬にちゅっとキスをする。

 思わずオレは菜々子の肩を抱き寄せた。

 少し戸惑ったような表情を見せる菜々子だが、すぐにオレの胸に顔をうずめてきた。オレの心臓がドクンと大きく跳ねる。

 あー、やべえシャンプーの匂い。 

 菜々子の髪のシャンプーの匂いがオレの脳天を突き抜けて、ムクムクと13歳の下半身が反応してしまう。

 51脳は『焦るな』と警告しているが、13脳は『今だ!』と叫んでいる。

 ……まあ、なんだ。

 拒絶されたらされたで、仕方ない。遅かれ早かれ揉むんだ。ダメだったら絵美の胸を揉めばいいだけの話。

 オレは悩んだが、菜々子をじっと見つめた。

「ねえ……悠真……」

「なに……?」

「キス……して?」

「え……」

「キス……もっと……」

 菜々子の瞳が潤んでいる。

 あー、だめだ。もう抑えられない。

 オレはゆっくりと菜々子にキスをする。

 最初は優しく、やがて深く。

 菜々子の唇は柔らかくて温かく、甘い唾液が絡みつく。

「んっ……」

 菜々子が小さな声を上げた。

 オレの手は自然と菜々子の背中に回り、彼女の体を抱きしめる。

 そして――。

 オレの左手がゆっくりと菜々子の胸へと伸びていく。

 菜々子の制服の布越しに感じる胸の柔らかさは想像以上で、オレの心臓は破裂しそうなくらい速く鼓動している。

「あっ……」

 菜々子が驚いたように声を漏らすが、抵抗はしない。

 オレは徐々に菜々子の制服のボタンを外していく。

 一つ……二つ……。

 菜々子の白い肌が見え始めた。

「恥ずかしい……」

 菜々子が小さな声で言った。

 オレは手を止めずにさらにボタンを外していく。

 制服の下の白いブラジャーが、柔らかな曲線に沿って慎ましく膨らんでいた。その白さが肌の透き通るような美しさを一層際立たせる。

「菜々子……」

 オレの指先がブラジャーのカップに触れる。

 薄い布越しに伝わる温かさと、弾力のある感触に、13脳が沸騰しそうになった。

 美咲でも経験している。

 凪咲もした。

 礼子も純美も同じだ。

 なのに何でこんなに興奮するんだろう?

 相手が違えば、それだけ違った興奮がある。

 こんな経験は前世ではなかった。

 同時に6人なんてあり得なかったからだ。

 そういう意味では未経験の初体験ともいえるな。

 51脳は慎重に、しかし大胆にことを進めていく。慣れたもんだ。

 みんなと同じ運動部だが、スポーツブラなんて概念はない。

 あったのかもしれないが、都心部か、もしくは外国だろう。

 ご多分に漏れず、美咲や凪咲と同じように、例外なく白の清楚なブラジャーだ。

 菜々子は目を閉じたまま小刻みに震えている。

 その表情は恥ずかしさと、ほんの少しの期待が入り混じったように見えた。

 呼吸が浅くなって胸が小さく上下するたびに、ブラジャーの生地が擦れる音が、妙に生々しく耳に響く。

 オレはゆっくりと、まるで壊れ物を扱うように、その柔らかな膨らみを包み込んだ。手のひらに吸い付くような感触に、ゾクッと背筋に電気が走る。

「んっ……」

 菜々子の口から、か細い吐息が漏れた。

「ごめん……嫌だったら、言って?」

 オレは一応聞いたが、ここまできて嫌がるはずはない。

 嫌なら最初っから拒絶していたはずだ。

 菜々子はゆっくりと目を開け、潤んだ瞳でオレを見上げた。その瞳には、戸惑いと、それでもなおオレを受け入れようとする、強い光が宿っていた。

「う、うん……大丈夫」

 言葉を探すように口を開いたが、結局何も言わなかった。ただ、オレの肩に顔をうずめ、しがみつくように抱きしめ返してきただけだった。

 よしっ! これで菜々子もレベルアップした。

 あとは2年の間中にフェラまでもっていくか。

 ああ、いや、それは美咲や凪咲が先だな。

 次回予告 第83話 (仮)『絵美。ハグからキスへ』

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