我ら

転生した無名藩士、幕末の動乱を生き抜く

第481話 『京への道』

慶応五(明治二)年六月十一日(1869年7月19日) 大坂湾沖 大村第一艦隊旗艦『知行』の艦橋は静寂に包まれていたが、今まで遠巻きに見ていた小舟のうち、一際大きな小舟が艦隊へとゆっくりと接近してきた。 幕府の紋を掲げたその小舟には、大阪城代...
信長と純正、そして教え子たち

第931話 『義兵5,000の結集』

慶長九年三月二十六日(1604年4月25日) ポルトガル王国 リスボン近郊 夜明け前、リスボン近郊の森閑とした平原に、無数の松明の炎が揺らめいた。地方諸侯から集結した義兵たちが、続々と陣を張っている。数は既に3,000を超えていた。 侍医長...
転生した無名藩士、幕末の動乱を生き抜く

第480話 『鋼鉄の恫喝(どうかつ)』

慶応五(明治二)年六月十一日(18 慶応五(明治二)年六月十一日(1869年7月19日) 大坂城 ――発 天保山台場守備隊長 宛 大阪城代 本日巳刻みのこく(午前10時前後)沖合に大村軍艦十数隻現る。 中黒旗なし日章旗と藩旗のみ。 意図不明...
転生した無名藩士、幕末の動乱を生き抜く

第479話 『狼煙を上げよ』

慶応五(明治二)年六月八日(1869年7月16日) ――発 次郎 宛 岩倉様 夏草に 露と消えなむ 古き世の 驕おごりを知らで 身を滅ぼすかな―― このところ、世の移ろい真に急にて、心穏やかならぬ日々にございます。 そもそも人の性(さが)と...
信長と純正、そして教え子たち

第930話 『偽りの炭売り』

慶長九年二月二十四日(1604年3月24日) ポルトガル王国 リスボン 宰相クリストヴァン・デ・モウラによる強引な尋問は、3日目を迎えていた。「閣下、これ以上の続行は困難です。皆、同じことしかしゃべりません」 衛兵長が彼のそばに立ち、低い声...
転生した無名藩士、幕末の動乱を生き抜く

第478話 『慶喜の王手』 

慶応五(明治二)年六月七日(1869年7月15日) 夕刻 京都 小松帯刀邸「小松さん、左衛門佐殿の、いや、大村家中は一体何を考えているのか。さっぱり分からん。薩摩の考えはどうですか?」 木戸孝允は苛立ちを隠さずに太ももを叩いた。 正面の小松...
信長と純正、そして教え子たち

第929話 『証明なき告発』

慶長九年二月二十一日(1604年3月21日) 23時 ポルトガル王国 リスボン 国王は厳重な警戒の中、西棟の新たな部屋へと移され、一連の作業は深夜まで続いた。 ようやく全ての処置が終わった頃、オットーとアエリウスは宰相と共に静まり返った廊下...
転生した無名藩士、幕末の動乱を生き抜く

第477話 『最後通牒』

慶応五(明治二)年六月七日(1869年7月15日) 京都 貴族院 やべえ、言い過ぎたか……。 いや、恐れながらって言ったし、議会じゃないからオレが発言しても問題ないはずだ。 殿に迷惑かけたらいかんけど、ここで言わないとズルズルいってしまう。...
転生した無名藩士、幕末の動乱を生き抜く

第476話 『天動』

慶応五(明治二)年六月七日(1869年7月15日) 京都 貴族院 伊達宗城による『済衆議会』の結成宣言は、議会を新たな局面へと移行させた。 4つの政党がそれぞれの思惑を抱えてにらみ合い、議場は完全に行き詰まっていたのだ。 勘定奉行の選出は振...
『自宅のトイレが異世界に!転生者の美女2人と男1人に出会ったので、現代技術を使って産業革命を起こすことにしました』

第24話 『MPとマナの謎。そして銃武装決断』

王国暦1047年11月13日(火)13:00=2025年9月7日 18:00:15 ルナが言っていた仮説が正しいなら、ヤツらは無制限に魔法が使えることになる。 じゃあゲームでよくあるMPってないのか? ポーションの意味がないよな。あれは不足...
転生した無名藩士、幕末の動乱を生き抜く

第475話 『鼎立』

慶応五(明治二)年六月一日(1869年7月9日) 京都 貴族院 発議以来、勘定奉行の選出は一向に進展を見せなかった。「これはこれは、掃部頭殿。ご多忙の折にいかなる用向きにござろうか」 宇和島藩伊達宗城は、藩邸を訪れた井伊直憲を意味深な笑みで...
信長と純正、そして教え子たち

第926話 『暗雲』

慶長九年二月六日(1604年3月6日) 諫早城 純正の決断は明に変わって新しく傀儡かいらい国家を建国し、自らの影響下に置くものであった。 そのために|王嘉胤《おうかいん》と高迎祥に使者を送り、2人の力量を確かめつつ今後の計画を練っていたので...
転生した無名藩士、幕末の動乱を生き抜く

第473話 『薩長再び』

慶応五(明治二)年四月二十七日(1869年6月7日) 京都 貴族院「井伊掃部頭殿の弾劾を求める! 大義なき戦を起こそうとした罪は万死に値する!」 長州藩の議員席から、木戸孝允の鋭い声が響き渡った。 議場は次に口を開くであろう薩摩藩の席に注目...
信長と純正、そして教え子たち

第925話 『二者択一』

慶長九年一月六日(1604年2月6日) 諫早城「実は、先ほど申し上げた北からの知らせとは別に、南明の領内より看過できぬ知らせが届いております」 官兵衛は、手にした書状の中から数枚を抜き出して純正に渡した。「ほう、何じゃ?」「はっ。四川省、加...
信長と純正、そして教え子たち

第924話 『大陸の均衡』

慶長九年一月六日(1604年2月6日) 諫早城「殿下、お見事でございました」「世辞はよい。何も特別な事はしておらん。いずれが国益に適うか、彼の地の繁栄につながるかを考えたゆえじゃ」 かつての南海のけん騒がうそのように、諫早城内は静けさに包ま...
信長と純正、そして教え子たち

第923話 『マラッカ海峡経済圏』

慶長八年十二月五日(西暦1604年1月6日) 諫早「ようやく着いたな」 数ヶ月ぶりに踏む日本の土は硬く、そして懐かしい匂いがした。 長大な航海を終えた純正を、黒田官兵衛他の臣下が出迎える。「お待ち申し上げておりました。早速ですが、例の件、滞...
転生した無名藩士、幕末の動乱を生き抜く

第472話 『水面下の奔流』

慶応五(明治二)年四月二十四日(1869年6月4日) 井伊直憲が放った『詰問状』による妥協案は議場にざわめきを起こしたが、次郎は冷静にその場を観察していた。 ――発 隠密方 宛 左衛門佐殿 去る十八日ならびに十九日、薩長さっちょうそれぞれ上...
転生した無名藩士、幕末の動乱を生き抜く

第471話 『決裂か妥協か』

慶応五(明治二)年四月十八日(1869年5月29日) ――井伊掃部頭、長州征討を動議せり候。 大村は反対するも強硬採決ならば決裂も辞さずと発言せり候――。 短い文面は、またたく間に海を越えた。 ■長州 萩城「殿。ただちに上洛すべきにございま...
転生した無名藩士、幕末の動乱を生き抜く

第470話 『次なる火種』

慶応五(明治二)年四月十二日(1869年5月23日) 採決の日から2日後、議事堂には奇妙な緊張感が満ちていた。 次郎は公議政体党の議員たちが浮かべる自信に満ちた表情を横目に、思いを巡らせている。 彼らが勝利の勢いを駆って、次なる一手、何を打...
信長と純正、そして教え子たち

第922話 『ジョホール王国とアチェ王国』

慶長八年九月十二日(西暦1603年10月16日) ケープタウン 黒田長政が父・官兵衛への返書を認めるために席を外した。 総督室には重苦しい沈黙が流れている。 純勝は海図上のマラッカを見つめているが、ジョホールとアチェの一連の動きが、巧妙に張...
転生した無名藩士、幕末の動乱を生き抜く

第469話 『採決の日』

慶応五(明治二)年四月十日(1869年5月21日) 本会議での採決を翌日に控えた夜、慶喜が住む小浜藩邸の一室には、井伊直憲と加藤丹後守、そして小栗上野介と渋沢栄一が集っていた。 部屋の空気は張り詰めているが、奇妙な落ち着きがある。 出納帳は...
『自宅のトイレが異世界に!転生者の美女2人と男1人に出会ったので、現代技術を使って産業革命を起こすことにしました』

第7話 『招かざる客』

王国暦1047年9月15日(日)18:00 = 2025年9月6日(土)19時34分36秒<田中健太> ガルドとの夜の話は、オレの心に重くのしかかっていた。 魔法省の監視。 今のところ実害はないけど、オレの改良を良く思ってはいないはずだ。さ...
信長と純正、そして教え子たち

第921話 『マラッカの波紋』

慶長八年九月十二日(西暦1603年10月16日) 16世紀の東南アジアでは、明朝の冊封体制から脱却し、朝鮮や琉球とともに新たに日本の冊封下に入る国家が増加していた。 ベトナムにおいては、北朝(莫ばく朝)を滅ぼした鄭氏一族の東京国や阮氏の広南...
転生した無名藩士、幕末の動乱を生き抜く

第468話 『悪魔の証明』 

慶応五(明治二)年四月一日(1869年5月12日)「……そうか。出納帳を出せと」 慶喜の声は意外なほど落ち着いていた。「金の出入りが真でも案ずるには及ばん」 最初は驚きを隠せなかったが、じっくり考えた慶喜の答えはこうであった。 ――幕府の極...
信長と純正、そして教え子たち

第920話 『帰路』

慶長八年七月十日(西暦1603年8月16日)「これで、欧州での務めは全て終わったな」 テムズ川を下る御座船(遣欧艦隊旗艦)の甲板で、純正は小さくつぶやいた。 数か月に及んだ欧州歴訪の最後を飾るロンドンの街並みが、灰色の空の下でゆっくりと遠ざ...
転生した無名藩士、幕末の動乱を生き抜く

第467話 『逆転の一手』

慶応五(明治二)年四月一日(1869年5月12日)「それがしの不徳の致すところ。誠に申し訳ございませぬ」 詮議が終わって半刻ほど過ぎた頃であった。 京都に構える大村藩邸の一室で、根岸主馬が畳に額をすり付けんばかりに頭を下げている。 悔しさと...
信長と純正、そして教え子たち

第919話 『ジェームズ1世とロバート・セシル』

慶長八年七月四日(西暦1603年8月10日) イギリス ロンドン エリザベス1世は1603年3月24日に崩御(69歳没)して、1603年4月28日に埋葬されていた。 葬儀には駐英日本領事館から参列していたが、今回は純正と純勝、皇帝と皇太子の...
転生した無名藩士、幕末の動乱を生き抜く

第466話 『御料所差配詮議方と幕府除目詮議方』

慶応五(明治二)年四月一日(1869年5月12日) 1週間たっても、慶喜に対して伊達慶邦からの返事はなかった。 東北の遊説の行程は知らせてあったので、電信を使えばすぐに届くはずなのに、である。 慶喜は考えた。 返事がない……すなわち迷ってい...
転生した無名藩士、幕末の動乱を生き抜く

第465話 『慶喜、諸侯を巡る』

慶応五(明治二)年三月一日(1869年4月12日) 京都 仙台藩邸 慶喜は、東北の諸藩は会津、仙台、庄内、米沢の四藩が味方につけばまとまると考えていた。外様が多いが譜代も多い。大藩である仙台の威光は大きく、日本海側の諸藩も、仙台が味方につけ...
転生した無名藩士、幕末の動乱を生き抜く

第464話 『詭弁か忠義か』

慶応五(明治二)年二月十六日(1869年3月28日) 京都 大村藩邸 本日は夜も遅いので、と言って別れた翌日、居室で先に口を開いたのは純顕であった。「次郎。昨日は詭道きどうと申したが、つぶさにはいかなる手を打つのだ。公議政体党は数で我らを上...
信長と純正、そして教え子たち

第916話 『王たちのチェス盤』

慶長八年四月一日(西暦1603年5月11日)リスボン「何が賢王だ。バカバカしい。稀代きだいの愚王ではないか」「馬鹿野郎! 大声で言うんじゃねえ。捕まっちまうぞ」「庶子とは言えかわいそうに。何千何万リーグも果ての東の国に嫁がされるとは……」「...
転生した無名藩士、幕末の動乱を生き抜く

第463話 『慶喜の奇策』

慶応五(明治二)年二月十五日(1869年3月27日) ――議会が認めたなら、それで構わぬ。 江戸から戻った慶喜の答えは、次郎の予想に反してとても単純であった。 天領の議会管理も、幕閣の門戸を大いに開く提案も、議会の承認があれば認めるらしい。...
信長と純正、そして教え子たち

第915話 『純勝の恋と再びのコンスタンティノープル』

慶長八年三月十六日(西暦1603年4月27日) リスボン「は? 何だって? もう1回言ってみろ」「いえ、ですから父上、某……」「ああもう! はっきり申せ!」 どうした? いつになくモジモジしている。 まあこいつのことだから、案外大したことな...
信長と純正、そして教え子たち

第914話 『オスマン帝国の実情』

慶長八年三月十五日(西暦1603年4月26日) コンスタンティノープル この時のオスマン帝国は、ハサン・パシャの威厳と宮廷の荘厳さとは反対に、国内外に敵を抱えている状態である。 ハサンはグゼルジェ・マフムド・パシャ率いる騎兵隊の反乱を鎮圧し...
転生した無名藩士、幕末の動乱を生き抜く

第461話 『懐柔』

慶応五(明治二)年二月五日(1869年3月17日) 京都・小浜藩邸 障子の外からは、夕刻を告げる鐘の響きがかすかに届いていた。 調えられた食卓には鯛たいや鴨かもの吸物、京の野菜を使った膳が並んでいる。夜の饗応きょうおうは豪華ではないが、随所...
転生した無名藩士、幕末の動乱を生き抜く

第459話 『鹿児島での対峙と将軍家茂』

慶応四年十二月二十日(1869年2月1日) 鹿児島へ向かう船上 <次郎左衛門> さーて、どうしたもんかな。 馨かおるや俊輔にはああ言ったけど、あれはあくまで方便みたいなもんだ。 あいつらきっと『大村藩はオレたちの味方だ』なんて思い込んだまま...
『邪馬壱国の壱与~1,769年の眠りから覚めた美女とおっさん。時代考証や設定などは完全無視です!~』

第56話 『川の道と2つの計画』

西暦257年6月2日 弥馬壱国 都「『資源の道』を、オレたちの手で造る」 修一が地図の上に引いた力強い線は、希望の光ではなく、むしろあまりに遠い理想の象徴に見えた。工房に集まった誰もが、その言葉の持つ途方もない重さに息をのむ。「道、ですか…...
転生した無名藩士、幕末の動乱を生き抜く

第458話 『時と場合』

慶応四年十二月十日(1869年1月22日) 周防国 三田尻「御家老様、三田尻の港が見えてまいりました」 供の助三郎の声に次郎は我に返る。船室の窓に目をやると鉛色の空の下に長州の陸地が横たわっていた。「そうか。出迎えはあるかな」「井上馨殿が直...
転生した無名藩士、幕末の動乱を生き抜く

第457話 『グラバーと薩長』

慶応四年十二月八日(1869年1月20日) 京都 大村藩邸 次郎は江戸での諸外国への説明対応を終わり、幕府への引継ぎをした後に京都へ戻っていた。 戻ってきたの表現がしっくりくるほど、京都と江戸、大村を行き来している。 多忙な大村藩の家老であ...
転生した無名藩士、幕末の動乱を生き抜く

第456話 『スコットランド商人のささやき』

慶応四年十一月中旬(1868年12月下旬)「おや、井上さあと伊藤さあじゃなかと? どげんしたと?」 開国の影響を受けて西欧と東洋の文化が混在する国際都市長崎で、出島の多様な商業活動の騒音から距離を置いた丸山の静寂に包まれた高台に、その料亭は...
信長と純正、そして教え子たち

第907話 『科学の盾と信仰の刃』

慶長七年三月十五日(西暦1602年5月7日)リスボン大聖堂 毒殺計画の失敗から数日が経過し、枢機卿すうききょうの憎悪は頂点に達していた。「王は悪魔に魅入られた。もはや我らが王ではない。毒を見破る術など人間の業ではないのだ。あれは間違いなく悪...
転生した無名藩士、幕末の動乱を生き抜く

第454話 『勅許と激震』

慶応四年十月二十九日(1868年12月12日) 京都 岩倉邸「~との由にて、麿まろが草(下書き)をしたためて奏上いたしましゃる。近々に主上おかみより宣旨が発せられましゃる」 ! な、なんて? なんて言った? 殿が正四位下で近衛大将このえのだ...
信長と純正、そして教え子たち

第906話 『賢王の茨の道』

慶長七年二月十三日(西暦1602年4月5日) リベイラ宮殿 セバスティアン1世が政教分離を宣言した後、謁見の間は静寂に包まれていた。 力なく歩きながら部屋を出た枢機卿すうききょうは、恥辱を感じた表情をローブのフードで隠し、彼に従う保守派貴族...
転生した無名藩士、幕末の動乱を生き抜く

第453話 『武備恭順 ~長州藩、復讐への道筋~』

慶応四年十月二十七日(1868年12月10日) 周防国 山口城 周布政之助の死は、長州藩に重苦しい影を落としていた。 慶喜の政治的裁定によって藩の重臣が命を絶たれた事実は、藩士たちの心に幕府への消えぬ憎悪を刻み付けたのである。藩庁の空気は悲...
転生した無名藩士、幕末の動乱を生き抜く

第452話 『三権分立と薩長の離反』

慶応四年十月二十日(1868年12月3日) 京都 大村藩邸  京都の混乱が一応の決着を見てから六日が過ぎ、徳川慶喜の政治的手腕によって表面上は秩序が回復したかに見えた。 しかし次郎には、この平穏が砂上の楼閣に過ぎないと分かっている。 三権分...
転生した無名藩士、幕末の動乱を生き抜く

第451話 『慶喜の政治的裁定と三権分立への道』

慶応四年十月十四日(1868年11月27日) 二条城 偽の長州藩士2名(真犯人)  罪状:騒乱罪(首謀者)、放火罪、詐欺罪(身分詐称)、謀反罪(幕府転覆)   処罰:死罪(斬首) 見廻みまわり組隊士  罪状:騒乱罪(料亭での集団暴行・刃傷沙...
転生した無名藩士、幕末の動乱を生き抜く

第450話 『沙汰と黒幕』

慶応四年九月六日(1868年10月21日) 新選組の屯所で、土方は取り調べを続けていた。 しかしいっこうに進展はない。 一方には京都見廻みまわり組の隊士たち、もう一方には長州藩士たちがいる。「我らは何もしておらぬ。祝い酒の帰りに歩いていただ...
信長と純正、そして教え子たち

第904話 『賢王セバスティアン1世の探求』

慶長七年(西暦1602年)一月 ポルトガル王国・リスボン アムステルダムから帰国した視察団の報告は、リベイラ宮殿を未曾有の衝撃と混乱に陥れた。 謁見の間は重く冷たい沈黙に支配されている。 玉座の前に整列した重臣たちの顔には、焦りと屈辱、そし...
転生した無名藩士、幕末の動乱を生き抜く

第449話 『料亭の凶刃』

慶応四年九月四日 夜半 京都 京都守護職屋敷「……近藤、土方をここへ」 執務室の静寂を破ったのは、松平容保の低くしぼり出すような声だった。 近習が息をのんで退出すると、部屋は再び沈黙に包まれる。燭台しょくだいの炎が揺れ、机の前に座っている容...
信長と純正、そして教え子たち

第902話 『天下治平之大計』

慶長六年十一月四日(1601年11月28日) 帝都・諫早 指令室内では、昼夜を問わず担当者が全国から届く報告を叫びながら作業していた。 壁一面の巨大な日本地図の前では、書記官たちが長い竿さおの先に付けた駒を、目まぐるしく動かし続けている。 ...