殿

転生した無名藩士、幕末の動乱を生き抜く

第459話 『鹿児島での対峙と将軍家茂』

慶応四年十二月二十日(1869年2月1日) 鹿児島へ向かう船上 <次郎左衛門> さーて、どうしたもんかな。 馨かおるや俊輔にはああ言ったけど、あれはあくまで方便みたいなもんだ。 あいつらきっと『大村藩はオレたちの味方だ』なんて思い込んだまま...
外伝!フレデリック・ヘンドリック転生記~時代・技術考証や設定などは完全無視です!~

第31話 『国家と資本』

1591年8月18日(天正19年6月29日) ネーデルラント連邦共和国 ハーグ 数日前の熱気が、オラニエアカデミーの会議室にはまだ残っている。 シャルロットが提示した金融革命の壮大な計画は、メンバー全員の心を1つの方向へと向けさせた。目の前...
転生した無名藩士、幕末の動乱を生き抜く

第458話 『時と場合』

慶応四年十二月十日(1869年1月22日) 周防国 三田尻「御家老様、三田尻の港が見えてまいりました」 供の助三郎の声に次郎は我に返る。船室の窓に目をやると鉛色の空の下に長州の陸地が横たわっていた。「そうか。出迎えはあるかな」「井上馨殿が直...
信長と純正、そして教え子たち

第910話 『世界を繋ぐ線』

慶長七年九月二十五日(西暦1602年10月11日)リスボン「……重要な提案があるんです」 その言葉がセバスティアンの注意を強く引きつけた。イタリア商人たちが退出した後に執務室は急に静かになったが、すでに関心は新しい提案に移っている。 「今後...
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第457話 『グラバーと薩長』

慶応四年十二月八日(1869年1月20日) 京都 大村藩邸 次郎は江戸での諸外国への説明対応を終わり、幕府への引継ぎをした後に京都へ戻っていた。 戻ってきたの表現がしっくりくるほど、京都と江戸、大村を行き来している。 多忙な大村藩の家老であ...
信長と純正、そして教え子たち

第909話 『法廷準備と新たな同盟~枢機卿裁判とイタリア商人~』

慶長七年九月二十五日(西暦1602年10月11日)リスボン「陛下、枢機卿すうききょうの弁護人はどうなさいますか」 法務大臣が羊皮紙に目を通しながら口を開いた。 教皇特使がローマへ帰国してから2週間が過ぎ、リベイラ宮殿では特別法廷の準備が本格...
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第456話 『スコットランド商人のささやき』

慶応四年十一月中旬(1868年12月下旬)「おや、井上さあと伊藤さあじゃなかと? どげんしたと?」 開国の影響を受けて西欧と東洋の文化が混在する国際都市長崎で、出島の多様な商業活動の騒音から距離を置いた丸山の静寂に包まれた高台に、その料亭は...
信長と純正、そして教え子たち

第908話 『ローマ教皇庁』

慶長七年七月十一日(西暦1602年8月27日)リスボン「よいか、気づかれないよう迅速に任務を遂行するのだ」「ははっ」 セバスティアンが逮捕状に署名した翌朝早く、王室保安局の部隊が静かに出動した。 石畳の道に響く統制された足音が、行き交う者も...
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第455話 『再び、フィクサー次郎』

慶応四年十一月上旬(1868年12月中旬) ・まずは幕府に公式に合議制を認めさせる(成功・貴族院) ・貴族院議場を幕府の権限を弱めるために本願寺に移設(論議中に騒動発生) ・無党派層の取り込み(進行中だが京都の騒乱のために進んでいない) 本...
信長と純正、そして教え子たち

第907話 『科学の盾と信仰の刃』

慶長七年三月十五日(西暦1602年5月7日)リスボン大聖堂 毒殺計画の失敗から数日が経過し、枢機卿すうききょうの憎悪は頂点に達していた。「王は悪魔に魅入られた。もはや我らが王ではない。毒を見破る術など人間の業ではないのだ。あれは間違いなく悪...
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第454話 『勅許と激震』

慶応四年十月二十九日(1868年12月12日) 京都 岩倉邸「~との由にて、麿まろが草(下書き)をしたためて奏上いたしましゃる。近々に主上おかみより宣旨が発せられましゃる」 ! な、なんて? なんて言った? 殿が正四位下で近衛大将このえのだ...
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第906話 『賢王の茨の道』

慶長七年二月十三日(西暦1602年4月5日) リベイラ宮殿 セバスティアン1世が政教分離を宣言した後、謁見の間は静寂に包まれていた。 力なく歩きながら部屋を出た枢機卿すうききょうは、恥辱を感じた表情をローブのフードで隠し、彼に従う保守派貴族...
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第453話 『武備恭順 ~長州藩、復讐への道筋~』

慶応四年十月二十七日(1868年12月10日) 周防国 山口城 周布政之助の死は、長州藩に重苦しい影を落としていた。 慶喜の政治的裁定によって藩の重臣が命を絶たれた事実は、藩士たちの心に幕府への消えぬ憎悪を刻み付けたのである。藩庁の空気は悲...
外伝!フレデリック・ヘンドリック転生記~時代・技術考証や設定などは完全無視です!~

第30話 『金融革命~オランダに現れた銀行と証券取引所~』

1591年8月15日(天正19年6月26日) オラニエアカデミーの一室 フレデリックたちはコルネリス・ピーテルスゾーン・ホーフトをアカデミーの一室に案内して商談し、その後メンバーで相談するために別室に移動して議論を交わしていた。 アカデミー...
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第452話 『三権分立と薩長の離反』

慶応四年十月二十日(1868年12月3日) 京都 大村藩邸  京都の混乱が一応の決着を見てから六日が過ぎ、徳川慶喜の政治的手腕によって表面上は秩序が回復したかに見えた。 しかし次郎には、この平穏が砂上の楼閣に過ぎないと分かっている。 三権分...
信長と純正、そして教え子たち

第905話 『望むところだ』

慶長七年二月十三日(西暦1602年4月5日)「では兄上、行ってまいります」「うむ、日本はもちろんだが、欧州においてポルトガルの影響力は大きいからな。しっかり頼むぞ」 フレデリックは、先月ポルトガルより届いた技術交流(供与)と『火山の冬』に関...
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第451話 『慶喜の政治的裁定と三権分立への道』

慶応四年十月十四日(1868年11月27日) 二条城 偽の長州藩士2名(真犯人)  罪状:騒乱罪(首謀者)、放火罪、詐欺罪(身分詐称)、謀反罪(幕府転覆)   処罰:死罪(斬首) 見廻みまわり組隊士  罪状:騒乱罪(料亭での集団暴行・刃傷沙...
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第450話 『沙汰と黒幕』

慶応四年九月六日(1868年10月21日) 新選組の屯所で、土方は取り調べを続けていた。 しかしいっこうに進展はない。 一方には京都見廻みまわり組の隊士たち、もう一方には長州藩士たちがいる。「我らは何もしておらぬ。祝い酒の帰りに歩いていただ...
信長と純正、そして教え子たち

第904話 『賢王セバスティアン1世の探求』

慶長七年(西暦1602年)一月 ポルトガル王国・リスボン アムステルダムから帰国した視察団の報告は、リベイラ宮殿を未曾有の衝撃と混乱に陥れた。 謁見の間は重く冷たい沈黙に支配されている。 玉座の前に整列した重臣たちの顔には、焦りと屈辱、そし...
信長と純正、そして教え子たち

第903話 『ポルトガルの焦燥』

慶長六年(西暦1601年)十二月 ポルトガル王国・リスボン リスボンの空は鉛色の雲に重く閉ざされていた。 本来であれば冬でも気温が高い地域だが、大西洋から吹く風は冷たく湿気を含んでおり、太陽の暖かさを感じられない港町は、北方の地域と同じく活...
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第448話 『長州を救う密約』

慶応四年九月三日 夜更け 京都 大村藩邸 日付がまさに変わろうとする刻限であった。 自室に長州藩の家老・周布政之助と重臣・久坂玄瑞を残し、次郎は純顕の私室へと続く廊下を速足で進んでいく。 静まり返った屋敷に、次郎の足音だけが響いた。その歩み...
『邪馬壱国の壱与~1,769年の眠りから覚めた美女とおっさん。時代考証や設定などは完全無視です!~』

第55話 『資源の道を拓け』

西暦257年3月下旬 対蘇国ついそこく国境地帯 険しい山々の間から、空の一部分だけが見える。木々の間を吹き抜ける風はまだ冷たく、兵士たちの呼気を白く染めた。「敵の動きはどうだ?」 崖の上の持ち場で、ミユマは静かに傍らの兵士に確認した。「はっ...
信長と純正、そして教え子たち

第901話 『ポルトガルの疑念』

遡ること慶長五年六月(1600年7月) ネーデルラント連邦共和国 ハーグ ハーグのビネンホフにある共和国議事堂の一室で、ネーデルラントで最も力を持つ2人の男が、1枚の報告書を前に腕組みをしていた。 1人は連邦共和国総督、マウリッツ・ファン・...
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第447話 『周布と久坂』

慶応四年九月三日(1868年10月18日) 夜の闇が三条小橋界隈の小さな居酒屋にまで忍び寄っていた。 行燈の頼りない光が、店内にいる数人の男たちの顔をぼんやりと照らしている。 昼間に藩邸で『弾圧停止の約束』を取り付けたとの知らせを受け、束の...
信長と純正、そして教え子たち

第900話 『黄金の国の飢餓』

慶長五年(1600年)十一月 新生インカ帝国首都 クスコ「……まだ、来ないのか」 絞り出すような声が、がらんとしたクスコの玉座の間に響いた。 皇帝トゥパク・アマルの言葉は、問いかける相手もいないまま、高く冷たい石の天井に吸い込まれて消える。...
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第446話 『守護職弾劾』

慶応四年九月二日(1868年10月17日)「御用改めである! 神妙にいたせ!」 けたたましい怒鳴り声と共に、旅籠の部屋の障子が無残に蹴破られた。 月明かりを遮って現れたのは浅葱あさぎ色の羽織をまとった新選組の隊士たちである。抜き身の刀が行燈...
信長と純正、そして教え子たち

第899話 『飢える帝国』

慶長六年九月(1601年10月)肥前県諫早 政府庁舎 秋の収穫が終わった。 しかし残念ながら純正の1年前の予言は的中し、破滅的な結果がもたらされたのである。 南米ペルーのワイナプチナ火山が噴き上げた『見えざる灰』は、容赦なく日本列島にも降り...
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第445話 『第一回貴族院と事件』

慶応四年八月下旬(1868年10月) 京・小松帯刀たてわき邸 庭に落ちる影が、ゆっくりと西へ傾き始めていた。 帯刀は大久保利通が去った後、数日間にわたって一人部屋に籠もって考え込んでいる。 大久保が示した策は暗闇を照らす希望の光にも見えれば...
信長と純正、そして教え子たち

第898話 『見えざる灰』

慶長六年九月十九日(1601年10月25日) 肥前県諫早 帝国政府庁舎 純正が館山で東日本の新たな秩序の礎を築いている頃、首都諫早では、緊張感の中で国家の全ての機能がフル稼働していた。 帝国食糧安全保障会議。 そこでは、帝国の存亡を左右する...
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第444話 『公儀政体党』

慶応四年八月十五日(1868年9月30日) 京・薩摩藩邸「和戦両様? 詳しゅう申せ、帯刀たてわき」「は」 久光の低い声には未だ納得できない苛立ちが表れている。帯刀は主君の視線を真っ直ぐに受け止め、覚悟を決めて口を開いた。「は。まず『和』ん道...
信長と純正、そして教え子たち

第897話 『江戸と館山』

慶長五年九月十三日(1600年10月19日) 安房国館山 館山に向かった純正の座乗艦『多比良』は、3日間の航海を経て館山の港に入港した。 天然の良港として知られている館山港の湾内は、波が穏やかで大型船の停泊にも適している。 里見義重は佐貫城...
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第443話 『公儀の影』

慶応四年八月十三日(1868年9月28日) 京・大村藩邸 小御所での嵐の朝議から二日が経過した。 次郎が心血を注いで起草した『重要技術管理法案』は、帝の裁可を経て正式に布告される段取りとなり、その知らせは京の有力者たちの間に静かだが確実な波...
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第896話 『新旧対立と安房』 

慶長五年九月十日(1600年10月16日)  純正は、新しく編成した戦略会議室の面々と蒸気船に乗って関東地方安房県館山へ向かった。「おお、これはなんとも……」「話には聞いておったが、真に風もないのに動いておるの」 武藤喜兵衛(真田昌幸)と曽...
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第442話 『典薬寮と権力闘争』

慶応四年八月十一日(1868年9月26日) 「ふう」 次郎は、書き上げたばかりの『重要技術管理法案』の草案から顔を上げた。 新暦に直すと9月末だが、それでも残暑が厳しい。 洛中らくちゅうの連続ボヤ騒ぎに関する加賀藩からもたらされた情報は、犯...
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第441話 『技術の担い手』

慶応四年六月二十三日(1868年8月11日)  横浜外国人居留地内 商館 商館内は緊張感に包まれていた。 幕府とフランス、双方の技術者を集めた実務者協議の場である。 パリ万博において、フランスに対する無煙火薬と高強度鋼の供与に関する協定が結...
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第440話 『典薬寮と理化学研究所』

慶応四年五月四日(1868年6月23日)「脚気衝心かっけしょうしん……にございますか。にわかには信じがたい診立てですな」 藩医は困惑した表情で首をひねっている。 薩摩藩邸に戻った小松帯刀は、藩医に大村藩病院での診断結果を報告していた。 横に...
信長と純正、そして教え子たち

第895話 『大日本帝国成立と組閣人事』

慶長五年九月一日(1600年10月7日) 諫早「皆、そういうわけで、新しきこの陣容で肥前国……いや、大日本帝国を切り盛りしていこうかと考えている。異論ある者は申し出よ」 秋の澄み渡った空気が、新しい時代の到来を告げているかのようである。 織...
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第439話 『事件は迷宮へ、されど疑心暗鬼は深まり時は過ぎる』

慶応四年五月三日(1868年6月22日)「五兵衛よ、詳しく知らせよ」 慶寧よしやすの問いに、五兵衛は頭の中で情報をすり合わせ、間違いがないか考えている。 ただの風聞では片付けられない、不穏な意味合いを持っていると考えられるのだ。「はい、申し...
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第438話 『顛末とこれから』

慶応四年五月三日(1868年6月22日)「申し上げます。禁裏御守衛総督屯所より上使がお越しになりました」 張り詰めた声が静かな部屋に響く。純顕が短く応じた。「お通しせよ」 初夏の陽光が障子を通して柔らかく差し込む中、大村藩邸の奥座敷には純顕...
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第437話 『投げられた賽・朝廷と幕府』

慶応四年五月一日(1868年6月20日) 京の空は朝から低い雲に覆われていた。 禁裏御守衛総督屯所の一室では、他とは一線を画す重厚な緊張感が満ちている。 部屋の中央には総督の一橋慶喜。 目の前には大村藩邸からもたらされた一通の書状が置かれて...
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第436話 『科学の目』

慶応四年四月二十五日(1868年5月17日) 洛中らくちゅう同時多発火災から数日後、容疑者の実行犯4名の男たちが捕縛された。 幕府、薩摩、長州、公家くげの全勢力に恨みを持つ者たちが同時に事件を起こし、人々に深い困惑をもたらしたのである。 こ...
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第893話 『覚醒』

慶長五年四月二十五日(西暦1600年6月26日)美濃 岐阜城 大阪での過酷な裁定から2日が経過し、信則たちは故郷の岐阜へ戻ることを許された。 温情ではない。 越前への移住準備で最後の務めを果たすためである。 岐阜城下は肥前国の役人によって完...
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第435話 『洛中謀略譚』

慶応四年四月十八日(1868年5月10日) 小御所での会議が混乱のうちに終わった翌朝、京の空には雨がやんで湿った空気が漂っていた。 洛中らくちゅうを騒がせた火事は大きな延焼もせず、いずれも小規模なボヤ程度の騒ぎで鎮火していたのである。 人的...
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第434話 『政治改革と京都炎上』

慶応四年四月十七日(1868年5月9日)夜 御所内 小御所 慶喜が提示した石高に応じた票数配分案は、小御所内の空気を再び動かした。 親藩・譜代と外様とざまの票数が拮抗きっこうし、公家くげ衆が加わる。 一見すると数の不公平を解消する現実的な妥...
一強からの変化

第891話 『白装束の嘆願:乱世を終わらせる覚悟』

慶長五年四月二十一日(西暦1600年6月2日)  数日間の逃避行の末、織田信則と蒲生氏郷の一行は近江国の佐和山城に到着した。 岐阜城を出てから、夜道を駆け、昼は身を潜めを繰り返したのである。 疲労は一行全員の体に重くのしかかっていたが、信則...
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第433話 『混迷の小御所会議:慶喜の貴族院構想と各藩の思惑』

遡って大村藩邸での会合の後――。「お見事でございます。これにて万事、滞りなく相成りました」 永井尚志なおゆきはわずかな笑みを浮かべて慶喜に言った。「ふん」「頭を下げて事が良き方へ流れるならば、いくらでも下げれば良いのです。然さりながら殿が行...
『邪馬壱国の壱与~1,769年の眠りから覚めた美女とおっさん。時代考証や設定などは完全無視です!~』

第54話 『動乱の九州:女王壱与と狗奴国との攻防』

西暦257年3月1日 方保田東原《かとうだひがしばる》の都「各国の皆様、お集まりいただき、ありがとうございます」 都の大広間では、弥馬壱国同盟の主要国から代表者が集まっていた。壱与が上座に座り、その隣には比古那と彌勇馬(ミユマ)、伊都比売(...
一強からの変化

第890話 『飢餓の進軍と死装束の長政』

慶長五年四月十日(西暦1600年5月22日) 「おお、越後屋に組屋ではないか。他にも……。何人かは見知らぬが、代替わりでもしたか? 懐かしいのう。如何いかがした?」 嘆願書を携えた十名の商人である。 昔馴染みへ語りかける穏やかな口調とは裏腹...
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第432話 『禁裏御守衛総督』

慶応四年四月十日(1868年5月2日) 京・大村藩邸 春の柔らかな日差しが、手入れの行き届いた庭の苔こけを照らしている。「――以上が、越前までのあらましの次第にございます」 次郎は純顕への報告を終えた。 北陸から戻って京で合流してから7日が...
一強からの変化

第889話 『深夜の脱出』

慶長五年四月十日(西暦1600年5月22日) 深夜 岐阜城 半月の夜だった。 岐阜城はまるで巨大な獣が寝息を殺しているかのように、深い静寂に包まれている。 だが、その静寂は張り詰めた弦にも似て、いつ切れてもおかしくない緊張をはらんでいた。 ...