信長と純正、そして教え子たち 第930話 『偽りの炭売り』 慶長九年二月二十四日(1604年3月24日) ポルトガル王国 リスボン 宰相クリストヴァン・デ・モウラによる強引な尋問は、3日目を迎えていた。「閣下、これ以上の続行は困難です。皆、同じことしかしゃべりません」 衛兵長が彼のそばに立ち、低い声... 2025.10.10 信長と純正、そして教え子たち
信長と純正、そして教え子たち 第929話 『証明なき告発』 慶長九年二月二十一日(1604年3月21日) 23時 ポルトガル王国 リスボン 国王は厳重な警戒の中、西棟の新たな部屋へと移され、一連の作業は深夜まで続いた。 ようやく全ての処置が終わった頃、オットーとアエリウスは宰相と共に静まり返った廊下... 2025.10.07 信長と純正、そして教え子たち
信長と純正、そして教え子たち 第928話 『見えざる敵』 慶長九年二月二十日(1604年3月20日) ポルトガル王国 リスボン リベイラ宮殿の一室では、オランダから急派された2人の医師、オットー・ヘウルニウス(救急科・脳神経外科)とアエリウス・ヴォルスティウス(総合診療・内科)が、山積みの資料を前... 2025.10.05 信長と純正、そして教え子たち
信長と純正、そして教え子たち 第927話 『西方の凶報』 慶長九年二月六日(1604年3月6日) ポルトガル王国 リスボン リベイラ宮殿の奥深く、国王セバスティアン一世の寝室の扉は固く閉ざされていた。 扉の前には、なすすべもなく立ち尽くす侍医たちの姿がある。 中からは何の音も聞こえず、その沈黙がか... 2025.10.02 信長と純正、そして教え子たち
信長と純正、そして教え子たち 第926話 『暗雲』 慶長九年二月六日(1604年3月6日) 諫早城 純正の決断は明に変わって新しく傀儡かいらい国家を建国し、自らの影響下に置くものであった。 そのために|王嘉胤《おうかいん》と高迎祥に使者を送り、2人の力量を確かめつつ今後の計画を練っていたので... 2025.09.29 信長と純正、そして教え子たち
信長と純正、そして教え子たち 第925話 『二者択一』 慶長九年一月六日(1604年2月6日) 諫早城「実は、先ほど申し上げた北からの知らせとは別に、南明の領内より看過できぬ知らせが届いております」 官兵衛は、手にした書状の中から数枚を抜き出して純正に渡した。「ほう、何じゃ?」「はっ。四川省、加... 2025.09.27 信長と純正、そして教え子たち
信長と純正、そして教え子たち 第924話 『大陸の均衡』 慶長九年一月六日(1604年2月6日) 諫早城「殿下、お見事でございました」「世辞はよい。何も特別な事はしておらん。いずれが国益に適うか、彼の地の繁栄につながるかを考えたゆえじゃ」 かつての南海のけん騒がうそのように、諫早城内は静けさに包ま... 2025.09.27 信長と純正、そして教え子たち
信長と純正、そして教え子たち 第923話 『マラッカ海峡経済圏』 慶長八年十二月五日(西暦1604年1月6日) 諫早「ようやく着いたな」 数ヶ月ぶりに踏む日本の土は硬く、そして懐かしい匂いがした。 長大な航海を終えた純正を、黒田官兵衛他の臣下が出迎える。「お待ち申し上げておりました。早速ですが、例の件、滞... 2025.09.26 信長と純正、そして教え子たち
信長と純正、そして教え子たち 第922話 『ジョホール王国とアチェ王国』 慶長八年九月十二日(西暦1603年10月16日) ケープタウン 黒田長政が父・官兵衛への返書を認めるために席を外した。 総督室には重苦しい沈黙が流れている。 純勝は海図上のマラッカを見つめているが、ジョホールとアチェの一連の動きが、巧妙に張... 2025.09.19 信長と純正、そして教え子たち
信長と純正、そして教え子たち 第921話 『マラッカの波紋』 慶長八年九月十二日(西暦1603年10月16日) 16世紀の東南アジアでは、明朝の冊封体制から脱却し、朝鮮や琉球とともに新たに日本の冊封下に入る国家が増加していた。 ベトナムにおいては、北朝(莫ばく朝)を滅ぼした鄭氏一族の東京国や阮氏の広南... 2025.09.16 信長と純正、そして教え子たち
信長と純正、そして教え子たち 第920話 『帰路』 慶長八年七月十日(西暦1603年8月16日)「これで、欧州での務めは全て終わったな」 テムズ川を下る御座船(遣欧艦隊旗艦)の甲板で、純正は小さくつぶやいた。 数か月に及んだ欧州歴訪の最後を飾るロンドンの街並みが、灰色の空の下でゆっくりと遠ざ... 2025.09.14 信長と純正、そして教え子たち
信長と純正、そして教え子たち 第919話 『ジェームズ1世とロバート・セシル』 慶長八年七月四日(西暦1603年8月10日) イギリス ロンドン エリザベス1世は1603年3月24日に崩御(69歳没)して、1603年4月28日に埋葬されていた。 葬儀には駐英日本領事館から参列していたが、今回は純正と純勝、皇帝と皇太子の... 2025.09.13 信長と純正、そして教え子たち
信長と純正、そして教え子たち 第918話 『ラ・ロシェルの条約とハーグでの転生者密談』 慶長八年五月二十五日(西暦1603年7月4日)フランスラ・ロシェル市庁舎「さて、条約の詳細だが」 純正は淡々と話し出す。「先の貴国との二度にわたる海戦において、少なからず我が国も人的・物的損害が出た。その賠償はもちろんだが、国家的責任として... 2025.09.10 信長と純正、そして教え子たち
信長と純正、そして教え子たち 第917話 『ラ・ロシェルの屈辱』 慶長八年五月二十五日(西暦1603年7月4日)フランス ラ・ロシェル港 3国をつなぐ電撃の結婚式が終わって、リスボンを発った蒸気船は北海をめざして航路を取っていた。 ビスケー湾は夏とはいえ海煙が濃く、陰鬱な灰色の波が船体を洗っている。 フレ... 2025.09.08 信長と純正、そして教え子たち
信長と純正、そして教え子たち 第916話 『王たちのチェス盤』 慶長八年四月一日(西暦1603年5月11日)リスボン「何が賢王だ。バカバカしい。稀代きだいの愚王ではないか」「馬鹿野郎! 大声で言うんじゃねえ。捕まっちまうぞ」「庶子とは言えかわいそうに。何千何万リーグも果ての東の国に嫁がされるとは……」「... 2025.09.06 信長と純正、そして教え子たち
信長と純正、そして教え子たち 第915話 『純勝の恋と再びのコンスタンティノープル』 慶長八年三月十六日(西暦1603年4月27日) リスボン「は? 何だって? もう1回言ってみろ」「いえ、ですから父上、某……」「ああもう! はっきり申せ!」 どうした? いつになくモジモジしている。 まあこいつのことだから、案外大したことな... 2025.09.04 信長と純正、そして教え子たち
信長と純正、そして教え子たち 第914話 『オスマン帝国の実情』 慶長八年三月十五日(西暦1603年4月26日) コンスタンティノープル この時のオスマン帝国は、ハサン・パシャの威厳と宮廷の荘厳さとは反対に、国内外に敵を抱えている状態である。 ハサンはグゼルジェ・マフムド・パシャ率いる騎兵隊の反乱を鎮圧し... 2025.09.02 信長と純正、そして教え子たち
信長と純正、そして教え子たち 第913話 『コンスタンティノープルの合流 』 慶長八年三月十四日(西暦1603年4月25日) リスボン「ここがお主が以前より言っておったポルトガルの都か……」 蒸気船の甲板から目前に広がる街並みを眺めながら、政権相談役の信長が深い感嘆の声を漏らした。 白い壁とオレンジ色の屋根が丘陵に沿... 2025.08.31 信長と純正、そして教え子たち
信長と純正、そして教え子たち 第912話 『黄昏の聖職者』 慶長七年十月二十一日(西暦1602年12月4日) リスボン 特別法廷に第3回公判の幕が上がった。 法廷周囲には重警備態勢が敷かれ、王室保安局員が常時巡回して緊張感が漂っている。 傍聴席にはポルトガルの貴族や商人、都市参事会の代表が静かに並び... 2025.08.29 信長と純正、そして教え子たち
信長と純正、そして教え子たち 第911話 『悪魔の技か、真実の証か』 慶長七年十月十八日(西暦1602年11月3日) 第2回公判が始まったが、リスボン特別法廷には前回とは違う空気が流れている。 第1回公判で、アルメイダは枢機卿すうききょうの権威を法と論理で打ち破った。 この事実が傍聴人の心から古い権威への恐れ... 2025.08.27 信長と純正、そして教え子たち
信長と純正、そして教え子たち 第910話 『世界を繋ぐ線』 慶長七年九月二十五日(西暦1602年10月11日)リスボン「……重要な提案があるんです」 その言葉がセバスティアンの注意を強く引きつけた。イタリア商人たちが退出した後に執務室は急に静かになったが、すでに関心は新しい提案に移っている。 「今後... 2025.08.25 信長と純正、そして教え子たち
信長と純正、そして教え子たち 第909話 『法廷準備と新たな同盟~枢機卿裁判とイタリア商人~』 慶長七年九月二十五日(西暦1602年10月11日)リスボン「陛下、枢機卿すうききょうの弁護人はどうなさいますか」 法務大臣が羊皮紙に目を通しながら口を開いた。 教皇特使がローマへ帰国してから2週間が過ぎ、リベイラ宮殿では特別法廷の準備が本格... 2025.08.23 信長と純正、そして教え子たち
信長と純正、そして教え子たち 第908話 『ローマ教皇庁』 慶長七年七月十一日(西暦1602年8月27日)リスボン「よいか、気づかれないよう迅速に任務を遂行するのだ」「ははっ」 セバスティアンが逮捕状に署名した翌朝早く、王室保安局の部隊が静かに出動した。 石畳の道に響く統制された足音が、行き交う者も... 2025.08.21 信長と純正、そして教え子たち
信長と純正、そして教え子たち 第907話 『科学の盾と信仰の刃』 慶長七年三月十五日(西暦1602年5月7日)リスボン大聖堂 毒殺計画の失敗から数日が経過し、枢機卿すうききょうの憎悪は頂点に達していた。「王は悪魔に魅入られた。もはや我らが王ではない。毒を見破る術など人間の業ではないのだ。あれは間違いなく悪... 2025.08.19 信長と純正、そして教え子たち
信長と純正、そして教え子たち 第906話 『賢王の茨の道』 慶長七年二月十三日(西暦1602年4月5日) リベイラ宮殿 セバスティアン1世が政教分離を宣言した後、謁見の間は静寂に包まれていた。 力なく歩きながら部屋を出た枢機卿すうききょうは、恥辱を感じた表情をローブのフードで隠し、彼に従う保守派貴族... 2025.08.17 信長と純正、そして教え子たち
信長と純正、そして教え子たち 第905話 『望むところだ』 慶長七年二月十三日(西暦1602年4月5日)「では兄上、行ってまいります」「うむ、日本はもちろんだが、欧州においてポルトガルの影響力は大きいからな。しっかり頼むぞ」 フレデリックは、先月ポルトガルより届いた技術交流(供与)と『火山の冬』に関... 2025.08.12 信長と純正、そして教え子たち
信長と純正、そして教え子たち 第904話 『賢王セバスティアン1世の探求』 慶長七年(西暦1602年)一月 ポルトガル王国・リスボン アムステルダムから帰国した視察団の報告は、リベイラ宮殿を未曾有の衝撃と混乱に陥れた。 謁見の間は重く冷たい沈黙に支配されている。 玉座の前に整列した重臣たちの顔には、焦りと屈辱、そし... 2025.08.10 信長と純正、そして教え子たち
信長と純正、そして教え子たち 第903話 『ポルトガルの焦燥』 慶長六年(西暦1601年)十二月 ポルトガル王国・リスボン リスボンの空は鉛色の雲に重く閉ざされていた。 本来であれば冬でも気温が高い地域だが、大西洋から吹く風は冷たく湿気を含んでおり、太陽の暖かさを感じられない港町は、北方の地域と同じく活... 2025.08.08 信長と純正、そして教え子たち
信長と純正、そして教え子たち 第902話 『天下治平之大計』 慶長六年十一月四日(1601年11月28日) 帝都・諫早 指令室内では、昼夜を問わず担当者が全国から届く報告を叫びながら作業していた。 壁一面の巨大な日本地図の前では、書記官たちが長い竿さおの先に付けた駒を、目まぐるしく動かし続けている。 ... 2025.08.06 信長と純正、そして教え子たち
信長と純正、そして教え子たち 第901話 『ポルトガルの疑念』 遡ること慶長五年六月(1600年7月) ネーデルラント連邦共和国 ハーグ ハーグのビネンホフにある共和国議事堂の一室で、ネーデルラントで最も力を持つ2人の男が、1枚の報告書を前に腕組みをしていた。 1人は連邦共和国総督、マウリッツ・ファン・... 2025.08.04 信長と純正、そして教え子たち
信長と純正、そして教え子たち 第900話 『黄金の国の飢餓』 慶長五年(1600年)十一月 新生インカ帝国首都 クスコ「……まだ、来ないのか」 絞り出すような声が、がらんとしたクスコの玉座の間に響いた。 皇帝トゥパク・アマルの言葉は、問いかける相手もいないまま、高く冷たい石の天井に吸い込まれて消える。... 2025.08.02 信長と純正、そして教え子たち
信長と純正、そして教え子たち 第899話 『飢える帝国』 慶長六年九月(1601年10月)肥前県諫早 政府庁舎 秋の収穫が終わった。 しかし残念ながら純正の1年前の予言は的中し、破滅的な結果がもたらされたのである。 南米ペルーのワイナプチナ火山が噴き上げた『見えざる灰』は、容赦なく日本列島にも降り... 2025.07.30 信長と純正、そして教え子たち
信長と純正、そして教え子たち 第898話 『見えざる灰』 慶長六年九月十九日(1601年10月25日) 肥前県諫早 帝国政府庁舎 純正が館山で東日本の新たな秩序の礎を築いている頃、首都諫早では、緊張感の中で国家の全ての機能がフル稼働していた。 帝国食糧安全保障会議。 そこでは、帝国の存亡を左右する... 2025.07.29 信長と純正、そして教え子たち
信長と純正、そして教え子たち 第897話 『江戸と館山』 慶長五年九月十三日(1600年10月19日) 安房国館山 館山に向かった純正の座乗艦『多比良』は、3日間の航海を経て館山の港に入港した。 天然の良港として知られている館山港の湾内は、波が穏やかで大型船の停泊にも適している。 里見義重は佐貫城... 2025.07.27 信長と純正、そして教え子たち
信長と純正、そして教え子たち 第896話 『新旧対立と安房』 慶長五年九月十日(1600年10月16日) 純正は、新しく編成した戦略会議室の面々と蒸気船に乗って関東地方安房県館山へ向かった。「おお、これはなんとも……」「話には聞いておったが、真に風もないのに動いておるの」 武藤喜兵衛(真田昌幸)と曽... 2025.07.24 信長と純正、そして教え子たち
信長と純正、そして教え子たち 第895話 『大日本帝国成立と組閣人事』 慶長五年九月一日(1600年10月7日) 諫早「皆、そういうわけで、新しきこの陣容で肥前国……いや、大日本帝国を切り盛りしていこうかと考えている。異論ある者は申し出よ」 秋の澄み渡った空気が、新しい時代の到来を告げているかのようである。 織... 2025.07.21 信長と純正、そして教え子たち
信長と純正、そして教え子たち 第894話 『純正と信長』 慶長五年六月二十六日(1600年8月5日) 岐阜城「……」「……」 病によって半年以上も意識を失っていた純正の盟友は、痩せてはいたが、その目は穏やかであった。 静かな瞳がただ真っ直まっすぐに純正を見据えている。 部屋には他に誰もいない。 信... 2025.07.18 信長と純正、そして教え子たち
一強からの変化 第892話 『是非もなし』 慶長五年四月二十三日(西暦1600年6月4日) 大阪政庁 近江から昼夜を問わずに駆け続けた信則と氏郷は、ようやく大阪政庁に到着した。 和議への最後の望みをつなぐため、彼らは疲労した体に鞭むち打ってここまで来たのである。 肥前国の役人に案内さ... 2025.07.13 一強からの変化
一強からの変化 第891話 『白装束の嘆願:乱世を終わらせる覚悟』 慶長五年四月二十一日(西暦1600年6月2日) 数日間の逃避行の末、織田信則と蒲生氏郷の一行は近江国の佐和山城に到着した。 岐阜城を出てから、夜道を駆け、昼は身を潜めを繰り返したのである。 疲労は一行全員の体に重くのしかかっていたが、信則... 2025.07.11 一強からの変化
一強からの変化 第890話 『飢餓の進軍と死装束の長政』 慶長五年四月十日(西暦1600年5月22日) 「おお、越後屋に組屋ではないか。他にも……。何人かは見知らぬが、代替わりでもしたか? 懐かしいのう。如何いかがした?」 嘆願書を携えた十名の商人である。 昔馴染みへ語りかける穏やかな口調とは裏腹... 2025.07.09 一強からの変化
一強からの変化 第889話 『深夜の脱出』 慶長五年四月十日(西暦1600年5月22日) 深夜 岐阜城 半月の夜だった。 岐阜城はまるで巨大な獣が寝息を殺しているかのように、深い静寂に包まれている。 だが、その静寂は張り詰めた弦にも似て、いつ切れてもおかしくない緊張をはらんでいた。 ... 2025.07.07 一強からの変化
一強からの変化 第888話 『信則の岐路』 慶長五年四月十日(西暦1600年5月22日) 岐阜城 出陣準備の喧騒けんそうが屋敷を包む中、信則は自室に軟禁されていた。 兄・信秀への度重なる諫言かんげんが逆鱗げきりんに触れた結果である。「なぜ、この思いが届かぬのだ……」 信則は格子窓から... 2025.07.05 一強からの変化
一強からの変化 第887話 『座して死を待つか』 慶長五年四月二日(西暦1600年5月14日) 春の柔らかな日差しとは裏腹に、織田家とその同盟国が治める地は、静かに、しかし確実に壊死えしし始めていた。 肥前国資本の生産業者が一斉に撤退してから、わずか1か月後である。 当初の『暴動寸前の騒... 2025.07.03 一強からの変化
一強からの変化 第886話 『塩が消える日』 慶長五年三月四日(西暦1600年4月17日) 尾張 清洲城下「おい、どけ! 俺が先だ!」「ふざけるな! 昨日から並んでるんだぞ!」 美濃路に面した大店、『尾張屋』の店先は、怒号と罵声が飛び交う戦場と化していた。 店の前には数百の民が殺到し、... 2025.06.30 一強からの変化
一強からの変化 第885話 『抗えぬ国力差』 慶長五年二月二十日(西暦1600年3月16日) 岐阜城「何だと? 上様が?」 武井十左衛門は家来からの報告を受け、苦々しい顔をしている。 大日本国崩壊を受け、織田家は日ノ本大同盟以前の状態に戻り、純正から一切の干渉を受けなくなった。 信長の... 2025.06.28 一強からの変化
一強からの変化 第884話 『純正、問答無用』 慶長五年二月十六日(西暦1600年3月12日) 諫早城「して、殿下、この先は如何いかがなさるおつもりでしょうか。陸海軍すべて備えは十分にて、あとは殿下の号令のみにございます」「まあ待て、直茂、まだ最後の確認をいたしておらぬ。安土の政庁にて、... 2025.06.26 一強からの変化
一強からの変化 第883話 『寿命と病状と織田家中』 慶長五年一月二日(西暦1600年2月16日) 岐阜城 年が明けて慶長五年となったが、年賀の挨拶どころではない。 信長の病状がまったく変わらず、その病状も秘匿されていたので、織田家中はおろか領内でも不穏な噂が飛びかっていたのだ。 当主である信... 2025.06.24 一強からの変化
一強からの変化 第882話 『信長の病状』 慶長四年十一月十六日(西暦1600年1月2日) 岐阜城「馬鹿な! 目通り叶わぬだと! 貴様、わしが浅井備前守と知っての事か! 義兄あにの見舞いも出来ぬなど聞いた事がない! 今一度とりつくのだ!」 浅井長政は怒りを露わにしたが、城兵は冷静であ... 2025.06.22 一強からの変化
一強からの変化 第881話 『密書と各州』 慶長四年十一月十二日(西暦1599年12月29日) 能登 七尾城「何、書状じゃと?」「は、岐阜の宰相武井十左衛門からそれがしへの書状にございます」 武井十左衛門は織田の重臣であったが、それでも直接他家の当主に手紙は送れない。 そのため、同じ... 2025.06.20 一強からの変化
一強からの変化 第880話 『武井十左衛門』 慶長四年十一月二日(西暦1599年12月19日)「おいおっさん! まさか今この有り様でくたばるつもりじゃねえだろうな?」「ふっ……。その声は平九郎か。余に然様さような物言いが出来るのはお主しかおらんが。減らず口をたたきおって」 部屋の中には... 2025.06.18 一強からの変化